06/15
2015
常識を覆すイノベーションが起きる理由
「修正した事業計画書は、
新潟県のどんな旅館の稼働率・客単価率を
当てはめても実現しないでしょう」
雑誌『自遊人』の編集長である
岩佐十良(いわさ・とおる)氏が、
旅館業を始めるために、古い旅館の
改修工事を進めていたときのこと。
融資を求めた銀行へ
修正した事業計画書を提出した際、
こんなことを言われたという。
岩佐氏は、新潟県の南魚沼市を活動拠点として、
旅やスローライフから見えてくる価値観を
様々なメディアを通して発信している。
冒頭の出来事は、先日読んだ
『里山を創生する「デザイン的思考」』
(岩佐十良著)に書かれていたもの。
移転後、地元の旅館が閉館することをきっかけに、
新たなチャレンジとして旅館の経営を決めたという。
だが、魚沼は人気観光地の軽井沢と違い、
集客が弱いとされていたため、
周囲からは宿の成功は
あり得ないだろうと言われていた。
それでも岩佐氏はなんとか
銀行の融資を受けることに成功。
しかし、今度はかさむ改修費のために
再度融資を相談したところ、
支援を断られてしまったという。
そんな様々な困難に遭いながらも
なんとか開業したのが、
「里山十帖」だ(私も宿泊してきた!)。
客室12部屋という規模だが、
旅館を取り巻く自然環境や泉質、
食文化などに対する岩佐氏のこだわりが
随所に感じられる旅館だ。
じわじわとその良さが伝わり、
わずか3ヶ月で客室稼働率90%を実現。
このように、
周囲から無理だと思われていたビジネスでも、
経営のセンスや情熱で成功につなげるケースは多くある。
ビジ達でも紹介している
企業を例にとってみよう。
長野県東御市にある
「ヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー」。
オーナーである玉村豊男氏は、
20数年前にワイン用のぶどうの木を植え、
その後ワイナリーづくりを構想したが、
コンサルタントや同業の人たちからは、
無理だと言われていた。
しかし、開業してから10年を過ぎた現在、
全国から年間4万人もの人が訪れるほどの
人気観光地になっているという。
つまり、
一見困難に見える条件や状況であっても、
経営者のセンスや情熱によって
克服することができるということ。
従来の価値観に囚われない
発想と挑戦こそ、イノベーション(新たな価値)
を生み出し、成功へと導いたのだろう。
いまの時代、
生活者の求めるものもシフトして、
“本当に良いものを求める価値観”が
実践されつつあると思えるのだ。
だとすれば、
これまでの常識にとらわれず、
経営者のセンスや情熱をうまく機能させれば、
成功の可能性は高いはずだろう。