01/14
2014
「里山十帖」のレーゾンデートル
「当館では環境に配慮し、
アメニティは必要最低限で用意しております。
とくにカミソリは難リサイクル商品ですので、
ご自身でお持ちのものをご利用していただくか、
持ち帰って何度か使用していただけたら幸いです」
これは以前ビジ達でも紹介した、
株式会社自遊人が手がける
新潟県南魚沼市の旅館「里山十帖」の
館内案内パンフレットの一文だ
(実はこの正月に1泊体験してきたのだ)。
この旅館は、2012年に「自遊人」の編集者であり
代表の岩佐十良(いわさとおる)氏が、
一軒の宿を引き継ぎ、改装工事を行って
2013年10月にオープンしたものだ。
歴史ある建物の骨組みを活かしたうえで、
デザイナーズ家具や現代アートなどの
モダンな要素を取り入れた空間になっている。
ここで体験できるのは、
徹底された里山十帖のこだわり。
冒頭でも紹介した通り、
いまやほとんどの旅館やホテルに
当たり前にあるアメニティは
必要最低限のもののみ。
私も出張の際は、歯ブラシや歯磨き粉、
カミソリなどは常備しているので問題ないが、
一部の人は驚いてしまうかもしれない。
また、次のような文章も。
「私たちが目指している料理は、
“認定を並べる料理”でもなければ、
“認定を得るための料理”でもありません。
目指しているのは、
力のある食材を感じていただくこと。
そして生産者の想いを
食材から感じていただくこと」
つまり、有機JAS認定などを
得ている野菜だとかではなく、
野菜を作っている人たちの想いを
料理を通じて感じ取ってほしい、ということ。
新潟県の南魚沼産のお米はもちろんのこと、
質にこだわった野菜は
どれをとっても生き生きしている。
私も食を通じて贅沢な時間を過ごすことができた。
さらに気になったのが、この一文。
「当館は「オーガニック」を
重要なテーマのひとつにしています。
そのため、コンビニのお弁当やカップラーメン、
ファストフード等の館内への
お持ち込みはご遠慮いただいております」
必要以上にお客さんにおもねることをせず、
自分たちのこだわりを体験して欲しい
(この価値観へのこだわりの意味を伝えたい!? )
という強い思いを感じた。
ふと、ビジ達で紹介した株式会社フラットフォーの
小森代表の話を思い出した。
好きなモノをつくり、好きな人がそれを買う。
強いこだわりや想いを込めて
作り手が提供するとは、理解ある人にとっては
心地の良い体験になるのだろう
(こんな価値観の人に来てほしいと…)。
これからは“お客さまは神様です”でもなければ、
何でもお客さんに合わせる時代ではない。
自分たちの流儀を貫き通し、
共感できるお客さんに楽しんでもらうことで
生まれるレーゾンデートル(存在意義)。
それこそが、里山十帖の仕事道ということだろう。
これからのビジネスでは、
この“レーゾンデートル”を
しっかり見つけ出すことが重要だ。