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2013
F1種より“固定種の日本”へ
「F1」と聞いて皆さんは何を思い浮かぶだろうか?
スピードが魅力の“フォーミュラ1”のこと?
それとも最近このビジ達でもご紹介した、
“福島第一原発”のこと?
いやいや、今回ご紹介する「F1」はそのどちらでもない。
先日、私は埼玉県の関野農園に2度目の訪問をし、
無肥料自然栽培を学んできた。
実は作物を育てるための「種」は、
大きく2種類“F1種”と“固定種”に分けることができるそうだ。
まずF1種とは、人為的な交配によって作られている種のこと。
最初に植えた種はしっかりと作物になりはするものの、
2代目以降は性質も定まらず、
一定のレベルにならないことが特徴だ。
つまり、目先の利益を重視した種なのだ。
一方、固定種とはその土地の風土の中で
長い年月をかけて根差し、伝承されてきた種。
地域に合った育て方をするので、
より生命力のある本来の作物ができるのだ。
当然、地域によって特長があり、
それが脈々と受け継がれていく種ということ。
そんな2種類の種について学んでいると、
私の頭にはかつてのあの言葉が浮かんできた。
『日本人にかえれ』
これは、出光興産が創業100周年を迎えた2011年に、
新聞広告(全15段)に掲載された
創業者・出光佐三氏の言葉だ。
今私たち日本人が生きている社会は、
そのほとんどが西洋の真似事ばかり。
まさに、物があふれている、
経済中心の社会といっていいだろう。
つまり、常に不安の多い、
人の心が安定しない社会なのだ。
私中島流で言うと、この不安定な社会を
「F1種文化」とでも名付けておこうか。
そんな“物があれば満たされる”という西洋からの考え方は、
人間の心の豊かさや精神を忘れ、
いつか行き詰る結果を招くことになる。
だからこそ出光佐三氏は、
このメッセージを私たちに贈ったのだろう。
とはいえ、この現代においても、
変わらず「和」の精神は残っている。
その価値観こそ日本人独自のDNA、民族的特性なのだ。
すなわち人々が愛情と信頼でつながり、
それぞれが周りの人たちのために力を発揮する姿勢。
そして、日本人が古くから大切にしてきた
和の精神・互譲互助の精神、
自分たちの利益ばかりを追求するのではなく、
世のため人のためにことを成す価値観。
そんな安定感があり、生命力(存在感)のある
“固定種の日本”に私たちはシフトしなくてはならない。
固定種としての日本の文化と価値観は、
長く続いた経済優先型のビジネスモデルが過渡期を迎えた今、
私たち日本人のあるべき姿なのだろう。