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目からウロコのおすすめ本

10/15
2013

book (1)

「いちえふ」竜田一人

『物書きの本質を体現しているこの作品の迫力の前では、
ただ頭の中で考えて何か高尚なことを描こうとしている
作品がちっぽけに見えてしまう』

これはある審査員の談。

今回は、おすすめ本といいながらもご紹介するのは「マンガ」。
それも週刊コミック誌『モーニング』に掲載された
1回限りの読み切りマンガだ。

その名は、「いちえふ」。

福島第一原発「1F」での真実を描いたこの作品は、
第34回MANGA OPENでは満場一致で大賞を獲得。
先の談は、その審査員のコメントである。

作者の竜田一人(たつた・かずと)氏は、
元々漫画家として活動していたようだが(?)、
高給と好奇心、それにほんの少しの義侠心から、
福島第一原発の仕事を求め、作業員となったそうだ。

実際に作者が現場に赴いて取材して描いたということもあり、
ストーリー性はほとんどないにせよ、読み応えのある作品だった。
何より、そこには“リアリティ”があったのだ。

例えば、その現場で作業するときの服装。
綿手袋、ゴム手袋、靴下、靴、靴カバー、
某SF映画に出てくるような全面マスクなどをして、
その建屋に足を踏み入れることが描かれている。

また、放射線計測器APDを付けて、
危険な現場に入る直前、
「ご安全に!」と声をかけ合うのだとか。

まさにそこで働いていないとわからない
“真実”が描かれているのだ。

そして、そこで働く人たちの気持ち、真剣さ、
大変さまでもがこのマンガからは伝わってくる。
それこそ、現場を普通にカメラにおさめた映像よりも、
“リアリティ”が伝わってくるのだ。

言うならばこの作品には、“物語性”はあまりない。
しかし、マンガだからこそ伝えられる“リアリティ”がそこにある
(まぁ~場所が場所だけに、ほとんどの人が足を踏み入れることも
観ることもできない可能性のあるところだからだろうか)。

マンガというものが子供だけのものから大人のものへ、
そして一つの特徴を持った
“メディア”としての役割を担っているとも言える。

少し前に紹介した「島耕作」の弘兼憲史氏、
「ブラックジャック」の手塚治虫氏もそうだが、
今回の竜田一人氏も少し違った角度から、
マンガだからこそ伝えられること、
伝えなくてはいけないことを描いてくれている。

福島第一原発で作業員として働いていた作者が
描く渾身のルポルタージュ。
ぜひ機会があれば読んでいただきたい。

book (1)

第34回MANGA OPEN大賞

book (2)

物語性よりもリアリティ

book (3)

マンガは重要なひとつのメディア

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