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06/16
2014

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川田昇流・時中す

私の元に届いた2本のワイン。
ラベルには「ココ・ファーム・ワイナリー」の文字が。
同ワイナリーのある栃木県足利市出身の方が
送ってくださったのだ。箱を開けると、
中にはこんな文章の書かれたしおりが…。

「1950年代、特殊学級の少年たちと
 その担任教師が急斜面の山を切り拓き、
 600本余りのぶどうの苗木を植えました。
 1969年、この山のぶどう畑に、
 知的な障害を持つ人のための
 「こころみ学園」ができました。
 そして1980年、山のふもとのぶどう小屋と
 呼ばれた小さな小屋で、
 ワインが産声をあげたのです。」

この教師とは、
創始者である川田昇氏のこと
(私が尊敬する先達の1人だ)。

障害を持つ学級の担任をしていた川田氏は、
子どもたちのつるつるでやわらかな手を見て
「この手ではこの子たちは生きていけない」
と感じたという。
そして、人や社会の役に立つ人間を育むべく、
山を購入し、自ら働き口を整えたのだ。

私は川田氏の取り組みに感銘を受け、
ココ・ファーム・ワイナリーを訪れ、
川田氏に直接お話を伺ったことがある。

しおりを読んでいると、
在りし日の川田氏のお話が思い返される。

「こんなはずじゃなかったんだよ」

当時88歳だった川田氏は、こう語った。
農業は、本来の人間の感覚を取り戻してくれる。
きっと、長生きできないかもしれない子どもたちを、
看取るまで面倒を見る覚悟だった川田氏にとって、
彼らが立派な農夫となり、
ずっと元気に働き続けてくれることは
うれしい誤算だったのだ。

いつの間にか子どもたちは、
どんなつらいことも平気でやり抜く
勤勉な青年であり、自信に満ちた
物言わぬ誠実な農夫になっていたという。
そしていつしか、そのやわらかな手は、
たくましい男の働く手に変わっていたのだという。

川田氏の取り組みは、まさしく
「君子、時中す」という言葉がふさわしい。

これは、
「優れたリーダーはその時その場に
ふさわしい手を打って、
あらゆる矛盾・相克を克服し、
どこまでも進歩・向上していく」
という意味だ。

川田氏が私財を投入し、
足利の山を購入してからの50数年間、
数えきれないほどの困難があったはず。

しかし、目の前のことに対して
逃げずに自分で道を切り拓いていった。
それが結果的にココ・ファーム・ワイナリーを
日本中に知らしめ、存在理由を
創り出すことにつながったのだ
(九州沖縄サミットでは、晩餐会で
 同ワイナリーのワインが使用されたという)。

川田氏がチャレンジした理由やテーマは
なかなか真似できるものではないが、
少なくとも“時中(実践においてその時その時が
過不及なしであること)”を心がけなければ、
次なるステージには行けないということ。

実は、いただいたワインはまだ開けていない。
今夜辺り、在りし日の川田さんに思いを馳せながら、
ワインを味わってみようか。

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大事に飲ませていただきます!

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しおりにはこれまでの歩みが

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創始者の川田昇氏

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ワインはここから生まれた!

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