02/22
2016
まちづくりトレンド “うらほろスタイル”
「まちづくり」に本来必要なのは、地域の人たちがそ
の気になることだ。
今回は私の出身地である北海道の十勝、その中でも太
平洋に面した地域の浦幌(うらほろ)という町のお話。
先日、その浦幌町で行われたフォーラムに参加した。こ
の町には5~6年もかけて実施され、今少しずつ成果に結
びついてきている子どもたちのためのまちづくり教育施
策がある。
その名も“うらほろスタイル”だ。
“うらほろスタイル”の特徴は、子どもたちに浦幌の
魅力を体感させること。
まず私がそのユニークさに着目したのが、サケ漁の職業
体験だ。お腹からイクラを取りだし、白子をかけて…と、
子どもたち自身にサケの受精や産卵を体験させるのだ。
また、別の機会には育てた稚魚を川へ放流させる。さらに
は燻製にしたり、調理をしたりしてみんなで食べることも。
一緒に漁を手伝うだけの漁業の職業体験ならば私も見た
ことがあるが、ここまで一貫して徹底的にやることには
本当に驚いた。
浦幌は農業、漁業、林業と第一産業が中心の町。その中でも、
自慢のサケ漁の一連の流れを子どもたちが自分自身で体験する。
そのことによって、仕事の深さや奥行きまでよくわかる仕組み
になっているのだ。
“うらほろスタイル”の中で特に私のお気に入りなのが、
中学生たちが考案したオリジナルドリンク「ウラペチーノ」
だ。
(フラペチーノなら私も飲んだことのあるドリンクだ)
この「ウラペチーノ」には十勝の牛乳と黒豆入りのコーヒー、
ラズベリーのクッキーが入っている。なんとバザーでは
250杯(?)程も売れたというから驚きだ。
さらにもうひとつ、私が興味を持った企画は…子どもたち
のつくった『はじめてのうらほろ』という絵本。浦幌町に
転校してきた少女が、次第にこの町を好きになっていくと
いうストーリーだという。子どもながらに企画としても目
の付けどころがよく、思わず読んでみたくなる絵本だと思う。
「まちづくり」に必要なのは、住んでいる人たちが自分
の町に興味を持ち、好きになること。だからこそ上辺だけ
ではなく、深いところまでしっかりと自分の町のよさを知
ってもらうことが大切だ。そのために浦幌町では、子ども
のときから地域の魅力に触れる時間や機会を用意し、意味
のある体験をさせているのだ。
そうすれば、いつの日かその子どもたちが成長して、
広い社会を体験しながらも、好きな自分のまちにまた
戻ってくるようになるのではないだろうか。まるで先
ほど紹介したサケが放流された川に戻ってくるようにだ。
そのときはきっと、浦幌のまちの「まちづくり」を担う新
たな一員として、力強く活躍してくれることだろう。
まさにこれこそが本来の「まちづくり」の姿なの
ではないかと私は思う。
たくさんの意味のある体験を積み重ね、一人ひと
りが地域に愛着を持ち、自分の町の未来を本気で
考える人間になれるように育てていく“うらほろスタイル”。
この“うらほろスタイル”な考え方は、私たちのビジ
ネスにもいろいろな点で大いに役立てることができる
のではないだろうか。