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2012
ヒット商品の“育ての親”「Mart」
「節約なんかつまらない!
もっと生活を遊んじゃおう!」
そんなキャッチフレーズが踊る、
女性向け雑誌『Mart』。
“節約”をテーマにした女性誌が多い中、
なんとも目を引くキャッチフレーズだ。(やっぱり売れるものはあるのだ!)
『Mart』は、大都市近郊に住む30~40代の
ミセスを対象にした雑誌。
雑誌不況と言われる中で着実に部数を伸ばし、
いまや22万部という人気ぶり。
なぜ、私がこの雑誌に注目したかって?
それは、先日のセミナーで
小阪裕司博士(こんな呼び方、
普段はしないのだが…)が、
「食べるラー油」をヒットさせた雑誌として紹介していたからなのだ。
いまや、『Mart』はヒット商品を発信する雑誌として、
メーカーからの注目も集めているという。
『Mart』に注目が集まる理由を分析すると、大きく2つ。
「なぜ人気雑誌になれたのか?」「なぜヒット商品が生まれるのか?」だ。
「なぜ人気なのか」ということを考えてみる時、
キーになるのが、「生活を豊かにする」というそのコンセプト。
ある時、『Mart』でル・クルーゼという
カラフルな鍋を紹介したところ、
読者たちに見事にヒットした。その理由は、なんと
“ル・クルーゼをキッチンに飾るとおしゃれに見える”からだとか。
(小坂博士談)
読者のミセスたちは、金銭的に余裕がある層。
だから商品に求めるのは、
安価な値段やスペックよりも
心を豊かにする「付加価値」だ。
『Mart』は、ル・クルーゼの持つ価値を、
ふさわしいターゲットに見事にマッチさせたのだ。
そして、2つ目。『Mart』がヒット商品を発信できるのは、
紙面に「読者会員」を登場させているから。
『Mart』は、読者モデルならぬ
「読者会員」が料理をしたり、
商品を紹介したりする企画が多い。
同じ生活者である彼女たちが
登場することで読者は親近感を覚え、
ついつい『Mart』のリピーターになってしまう。
その読者会員が商品をオススメすると、ファンである読者が購入。
そして口コミにのり、たちまちヒット商品が出来上がるという流れ。
商品の生みの親はメーカーだが、
『Mart』は“育ての親”というわけだ。
今の時代、商品を並べて売るだけではダメ。
そこには、感情を揺さぶる何か、
心を豊かにする価値が必要になる。
商品に新たな価値を作り出すことが、
多くの人を引き付けることに繋がるのだ。
心の豊かさという観点から商品に
新たな価値をつくり、
「読者会員」を通して、生活者に発信する。
まさに、『Mart』が創り出している世界は、
これからのビジネスの未来となることを実践していると言えるだろう。
私も、ミセスになった気で、
このボリュームある『Mart』のページをめくってみよう。