これからの選ばれるビジネス!

これからの選ばれるビジネス!中島セイジのビジネスの達人

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目からウロコのおすすめ本

08/08
2016

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コーヒーが冷めないうちに

『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和著。
サンマーク出版から出たこの小説をご存じだろうか。

これはとある喫茶店のとある座席に伝わる不思議な都市伝説の話。
その席に座ると、席に着いてから
コーヒーが冷めるまでの間だけ
望んだ過去の時間に戻ることができる
(条件が揃えば未来にも行けるらしいが…)。

…というのが、この小説の基本設定だ。
この不思議な喫茶店で時間旅行をする登場人物たちの
四つの物語が、小説の中で展開されている。

ベストセラーだという評判も知ったうえで読んでみたが、
この設定が思った以上に面白く、楽しんで読ませてもらった
(あちこちに話のわかりにくさもあり、
小説としてはちょっと不満もあるのだが…)。

と、ただこの本が面白かったという話ではない。
実はこの小説を読んでいるとき、
私がビジ達で少し前に紹介した、
未来の自分をのぞき見できる架空の『未来pad』をふと思い出したのだ。

『コーヒーが冷めないうちに』の、
せいぜい15分間だけ時間旅行ができる設定と、
未来の自分をちょっとだけのぞき見できる『未来pad』は
似ているのではないか、とも思ったのだ。

この小説の登場人物たちは、過去に戻ることで
いまの現実を直接的に変えられるわけではない。

それでも、ある人との過去の出来事を確認したり、
言えなかったことを伝えることで、
登場人物の心のありようが変化する。
そして、心が変われば当然、未来の行動も変わってくるということ。
つまり、登場人物たちは過去に戻れたことによって、
結果的に未来を変えられたのではないだろうか。

それに対し、私の『未来pad』は数十年後の自分を
ちょっとのぞき見できるのだが、
「別に未来を見なくたっていいのではないか」
と小説を読みながら思い始めていた。

未来の自分を期待を持って見るとしたら、
当然、今の自分より人格的にも地位的にも
ずっと成長した自分を誰しも見たいものだろう。

だとしたら、わざわざサプライズのある未来の自分を見なくても、
今から未来の理想の自分に近づくように
そのための行動を実践していけばいいのだ。

たとえば今自分が30歳だったとしたら、
50歳の「こうありたい姿」を具体的にイメージして、
20年の見取り図を描けばいい、ということ。

まぁ結論は、都市伝説の喫茶店や未来padに頼ることなく、
後悔しないようしっかりと計画して
一歩ずつ前に進むということだろう。
具体的なイメージと、確かな実行力で
いまからでも未来はいくらでも変えられるはず。

ちなみに、私はコーヒーが飲めないから、
できれば「紅茶が冷めないうちに」にしてほしいなぁ…。

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『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和著

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次回作は是非紅茶で・・・

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04/18
2016

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『ホステス心得帖―おもてなしの条件―』北新地社交料飲協会

世の中どんどん変化して参りますが、
いつも心得ていたいこと、大切なこと満載でございます。
一度に全部目を通すことも時間は掛かりませんが、
いつもバッグに入れて置いて取り出しては、
忘れていることを思い出しましょう。
「おもてなし」の世界に住む皆様には切にお願い申し上げます。

こんな書き出しで始まる『ホステス心得帖』。
大阪市北区を代表する高級飲食店街、
北新地のホステスが持ち歩く心得帖だ。
一体どんなことが書かれているのか…?
気になる内容は下記の10章から構成されている。

1.美しさの度合いと個性
2.お客様との応対
3.飲み方と飲ませ方
4.座待ちのテクニック
5.同僚からの評判
6.お客様との私的交際
7.貴女自身の私生活
8.経済生活の設計
9.プロとしての資格
10.べからず集33ヵ条

接客態度から私生活にいたる項目まで、
ホステスかくあるべきという姿が説かれている。
1980年に出版されたものを、昨年復刻したのだという。

実はいま、夜のお嬢さん方の世界に限らず、
私たちの仕事上でも大変参考になると
反響を呼んでいるのだ。
どんな内容なのか、一部を抜粋してみよう。

《お客様とお客様の関係を間違えぬこと。(中略)
信頼を築くのには時間がかかるが、
怒らせるのは一瞬である》

というどの業界のビジネスでも
基本的で重要なポイントから、

《男の最低の姿を見て、すべてを判断するな。
男は、その人が思っているほど立派ではないが、
ホステスが考えているよりは高級である》

このような夜の商売ならではのものもあり、
ユニークな言い回しでありながら、
そこには人に対する深いまなざしが感じられる。

私たちが読んでも面白く、
思わず納得してしまうこの心得帖だが、
ここで重要なのは、“かくあるべし”という意識を
事例を挙げてまとめている点。

おそらくはこの冊子が出版される以前の1970年代から、
北新地では当然のこととして育まれてきたルールがあったのだろう。
そして、バブルに向けて経済が豊かになる中で、
「この業界にあっても自分たちが本来のあるべき姿を
常に忘れず、徹底していこう」
という想いがあったからこそ、この冊子が作られたのだ。

どんな業界でも、
このように明文化されたものが発信されると、
その価値観を大切にしていこうと多くの人が考えるようになる。
そこにこの冊子の意味があると思うのだ。

私自身、学生時代の1年ほど、
ウェイターとして夜の商売に関わっていたこともあり、
これら心得の重要性はよく理解できるつもりだ。
ホステスの道は、人を相手にサービスする商いの道。

この道は、人間への深い理解と気遣いがなければ
成り立たない、奥深い世界ということ。
それがあるかないかの違いこそ、
プロか否かの分かれ目になるのだ。

ホステスの道と、私たちの道。
それぞれの専門分野はあるものの、
人を相手に商売をする点はどちらも同じ。

出版当初から時代は大きく移り変わったが、
何年経ってもどの分野でも、
商売におけるマナーなるものは
不変のものだということを強く感じた。

なお、この冊子は非売品だが、
北新地社交飲料協会公式ホームページ(http://kita-shinchi.org)
より、全文を読むことが出来る。
この心得帖から、何か得られることもあるはず!
ぜひ一読してみてはいかがだろうか?

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これが『ホステス心得帖』だ

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11/09
2015

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上橋菜穂子、守り人シリーズ

「なぜ島守り(しまもり)が
 タルシュ帝国の陰謀に加担するのだろ?
 自分で自分の首をしめるようなものじゃないか」

「ヤドカリが、それまでの殻を捨てて、
 大きな殻の下に入ろうとしているようなものでしょう」
 うんうん、いい比喩だこと。

「払っても払ってもくっついて離れない糸屑のように、
 なにをしていても幼いエーシャナの面影が、
 スリナァの脳裏から離れなかった」
 表現も、言い得て妙。

「サルーナはたそがれの光がさしこむ
 小部屋の床にひざまずいて、ひたすらに祈った。
 <海の母>よ、小舟が荒波の隙間をすりぬけるように、
 われらが災いの隙間をすりぬけられますように、と」だって。

いやいや、こんな言い回しをされてしまうと、もう脱帽状態。
これは上橋菜穂子(うえはしなほこ)著の
『虚空の旅人』の一節なのだが、
私はいま珍しく、ビジネス本ではなく
ファンタジー小説を読んでいる。

普段は自己啓発本やビジネス本を優先して読んでいる私だが、
近頃は小説にも手を伸ばすようになった。

そのきっかけは、全国の書店スタッフが
一番売りたい本を選ぶという本屋大賞である。
2013年には百田尚樹著の『海賊とよばれた男』が、
2014年には和田竜著の『村上海賊の娘』がこれに選ばれ、
一躍大ブームを巻き起こした。

もちろん私もこれらを読み、
その流れで今年の本屋大賞受賞作である
上橋菜穂子著『鹿の王』を手にとったのだが、
これがなんとも面白い。

あまりに面白いので上橋氏の他の書籍…
中でも注目の守り人シリーズに挑戦してみたというわけだ。

このシリーズは『精霊の守り人』、『闇の守り人』、
『夢の守り人』という具合に刊行されており、
私も全10巻のうち半分ほどを読破した。

ビジネス本ではないのになぜビジ達でご紹介するのかと言うと、
世界観や文章に高いクリエイティブ性を感じたからなのだ。

精霊の守り人は、この世とは違う世界を行き来できるという設定で、
地球儀に存在しない空間をつくり上げている。

点在していると思われた出来事は、
物語終盤になるとすべてが集約され、
思わず感嘆してしまうラストになっているのである。
その発想力、企画力、構成力は、
ビジネスにも活かせるところなのではないだろうか。

そして何より記事の冒頭でご紹介した一節のように、
比喩や言い回しがクリエイティブなのだ。
(残念ながら私にはなかなかできない芸当。)
とってつけたような言葉の飾りではなく、
その細かな様子を想像しやすい言葉選びである。

このように、すぐれた小説の世界観や物語は
ビジネスの企画にも活用できるし、
文章を書く者として表現の勉強にもなる。

自分自身を高めるためには、
ビジネス本以外にもこのような小説が有効だったのだ。

皆さんもビジネスで思い悩んだとき、
ボキャブラリーを増やしたいとき、上橋菜穂子著の
『守り人シリーズ』を読んでみてはいかがだろうか?

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2016年からは大河ドラマの放映が!

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次の本屋大賞は何かな~。

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08/03
2015

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『プレゼンは「目線」で決まる』 西脇資哲・著

プレゼンの目的とは、一体なんだろうか?
それは、上手く話すことではない。
きちんと伝えることでもない。
「相手を動かすこと」なのである。

それを改めて実感させてくれたのが、
日本マイクロソフト社のエバンジェリストである
西脇資哲(にしわき・もとあき)氏の著書
『プレゼンは「目線」で決まる』と、
西脇氏のプレゼンテーションだ。

西脇氏のプレゼン術は、それはそれは上手い!
喋りはもちろん流暢で分かりやすく、
明確に組み立てられたシナリオを元に話されている。

資料であるスライド、プレゼンのときの動作、
シナリオ、聞きやすい喋り方…。
何もかもが素晴らしく、非常に印象に残るものだった。

西脇氏は、何かを伝えようとするならば、
まずは見てもらうことが大前提だと言う。

昔の学校では、先生が「よそ見するな!」
なんて叱っていたものだが、つまりは同じこと。
「相手の目が見ていないもの」について伝えても、
99.9%理解されないそうなのだ。

聞き手の「目の動き」をコントロールし、
話に集中させるには、分かりやすい資料、
クオリティの高いスライドが鍵となるという。
どう伝えれば人を動かすことができるのか?を考え、
プレゼンに挑むべきだ。

このようなプレゼン術の秘訣を
丁寧に紹介しているのが本書なのである。

ここで私は、自分自身のプレゼンを振り返ってみた。
ふむふむ、意外とできているのではないか…?
写真、図の使い方や、
自分のトークを上手く織り交ぜているところなど、
自画自賛となってしまうが、うまくプレゼンしていると思う。

私のプレゼンでは、写真や概念図を多く使うのだが、
そこに余計な文章などは滅多に入れない。

そのことによって、聞いてくれる方の視線・興味を、
画面(モニター)に映し出されている写真や図に集中させているのだ。

そしてまずは事例の写真を解説し、興味の誘導を行う。
最終的には概念図に落とし込み、分かりやすくまとめる。
事例→根本的概念という興味をひきやすい順序(シナリオ)にも自信がある。

これからも「プレゼンは目線で決まる」
というところを意識した上で、
資料やスライド、シナリオづくりをしていきたいものだが…。

西脇氏の言うようなプレゼンを身につけていたことに、
ほっと安心したところだ。
いや~よかったよかった!

とはいえ、ここで安心していてはだめだ!
「人に伝えるためにはどうすれば効果的か?」というテーマは、
人前で話をする限り追求し続けなければなるまい!
これからも、精進あるのみ!?

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「相手の目」を誘導しよう!

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05/18
2015

book

『魂の商人 石田梅岩が語ったこと』山岡正義・著

石田梅岩の思想を、
現代のビジネスに活かすことを目標に、
月に1回開催している「石門心学・実践講座」。

開始から、ついに丸2年が経過!
そんな矢先、石門心学のメンバーが
昨年出版されたこの本を紹介してくれた
(竹花さん、ありがとう!)。

著者である山岡正義氏は、
なんと「人を生かす経営・人が生きる経営」を
モットーとして、経営コンサルティング活動をされている方!
気になるこの本の内容は…?

ビジ達を愛読してくれている方なら
ご存知であろう、石田梅岩。

江戸時代の思想家である
梅岩が活躍したのは、
元禄時代から享保時代にかけてのことで、
いまから約300年前になる。

当時の様子としては、
商人の勢力が台頭し、
活気のある時代であったようだが、
それも崩壊を迎え、多方面で問題が出始めた頃だったようだ
(近年でいうと、まるでバブル時代のような感じ?)。

そんな時代背景もあり、
商人たちは自分たちのことばかりを考えて、
お金にものをいわせていた。

しかし梅岩は、著書『都鄙問答(とひもんどう)』の中で
「実(まこと)の商人は先も立ち、我も立つことを思うなり」
という言葉を残している。

この言葉は、本来商人は自分の儲けだけでなく、
買い手のことも考えて商売しなければならないという意味。

驚くことに梅岩はこの頃、
当時の価値観とはかけ離れた、
倫理観に溢れる商人としての心得を説いていたのだ。

本書ではこういった内容が展開されているのだが、
私が一番共鳴したのは
「日本よ、いまこそ“梅岩”に帰れ!」
というエピローグ!

この書籍に出会う前から、
梅岩の教えをいろいろと発信していたが、
今後の日本に必要なのは
まさに梅岩の価値観だと語っていた。

なぜならこの教えはまさしく、
ビジネスだけではなく、
生き方の規範としても反映できることだからだ。

書籍の中で述べられていることだが、
実はアメリカ独立時に活躍した
ベンジャミン・フランクリンや、
『国富論』で有名なイギリス(スコットランド)の
経済学者であるアダム・スミスより
約30年も前に、梅岩は経済と倫理観について語っているのだ
(さすが石田梅岩!)。

梅岩の教えは日本独自のものではなく、
仕事と人の生き方の関係であり、哲理・哲学だ。
すなわち、“不易”な教えだったということだろう。

さまざまな中小企業を応援してきた
山岡氏だからこそ、
梅岩の価値観と現代を照らし合わせて、
この本を執筆されたのだろうか。

正直、勤勉、倹約を大切にするべきだと説いた梅岩。
今を生きるどんな人にも
大切にしてほしい価値観なので、
ぜひぜひ読んでいただきたい1冊だ!

book

今を生きる皆さんにチェックしてほしい1冊!

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