これからの選ばれるビジネス!

これからの選ばれるビジネス!中島セイジのビジネスの達人

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目からウロコのおすすめ本

04/21
2014

book1

「銀二貫」  高田郁 著

舞台は大阪、時代は江戸。
大阪の天満で発生した火災により、
大阪商人の心のよりどころである天満宮、
そして多くの商家が焼けてしまった。

焼け残った寒天問屋、
井川屋の主人である和助は心を痛め、
被災した仲間のためにも、自分の命と店を守ってくれたであろう
天満宮再建のために寄進しようと決意した。
そのために、銀二貫
(今の貨幣価値にして、およそ300~500万円!)
をなんとか集め、お金を懐に天満宮へ急ぐのだ。

ところが、その道中仇討(あだうち)に遭遇する。
斬られた親を必死に庇う子供を見て、思わず和助は
「この仇討オレが買った」と割って入ってしまった。
そして寄進のための銀二貫を差出し、
斬りかかっていた侍に仇討を断念させることに。
斬られた親はとうとう助からなかったが、
身寄りをなくした子供は連れ帰ることに。

さてこの銀二貫で買った仇討ち、
高かったか安かったか―――。

このストーリー、NHKで現在ドラマになっているので
(生憎私は見ていないけれど)、ご存じの方もいるだろう。
高田郁(たかだかおる)という女性作家による
時代小説、『銀二貫』はざっとこんな始まり方だ。
仇討を買ったところからの20数年間を、丹念に描く。

ドラマのキャッチコピ―
「なにわ商人のええ話でおます」の通り、
しみじみと良い物語なのだが、
私がおすすめしたいのは何もそのせいだけではない。

今の日本社会が経済優先主義のために
忘れかけているものがここにあるからだ。

作中、大阪の街(そして京都の街も)
は幾度も焼ける(江戸時代は実に火災が多かった!)。
その度に和助は「天満宮に寄進を」とお金を貯めるのだが、
その都度持ちあがる問題を解決するため
お金は消えてしまい、寄進はなかなか叶わない。

けれど決して無駄遣いではないのだ。
お金はその度に人助けに使われ、世の中に貢献していく。
それはつまり、和助たちのお金の使い道の判断基準が
「仁」と「義」だからに他ならない。
小説のタイトルこそ『銀二貫』だけれど、
この小説を貫く大きなテーマはお金ではなく
「仁」と「義」なのだ。
私がよく口にするこれらの価値観によって、
使われたはずのお金は巡り巡って社会にも貢献し、
結果として自分に返ってくる。
これは決して損得勘定ではできないことだ。

そして、こういう価値観こそ
これからのビジネスと日本にも
必要なのではないだろうか。

日本人なればこその価値観ではあるが、
経済効率優先の社会で忘れかけている人も多い。
それを呼び戻すことで、
ビジネスも、人も、もっと進化するはずだ。
社会性のあるビジネスが大切、
と私は言い続けているけれど、
それを支えるものも「仁」と「義」だ。

小説『銀二貫』、それは
いつの時代も、人にとって大切なものは
変わらないことを教えてくれる物語だ。


book

”仁”と”義”の物語!

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目からウロコのおすすめ本

03/24
2014

book1

成長から成熟へ ―さよなら経済大国 天野祐吉著

BS放送で長々と放送されている
あのテレビショッピングに物申す。
あれはどう見たって広告!

本来テレビのCM時間は
一週間の総放送時間の18%まで
と決まっているらしいが、
どうやらテレビショッピングは
“生活情報番組”として
位置づけられているらしく、
これはCMではないと主張しているという…。

こんな話を堂々と展開するのは、
『広告批評』の主宰者であり、
希代のコラムニスト・天野祐吉(あまの・ゆうきち)氏。
そして、そんな天野氏の著書こそ、
今週の目からウロコのおすすめ本だ。

希代のコラムニストの最後のメッセージ!
「広告という窓から世の中をのぞいてきた
ぼくの私的な日記みたいなものです」

と、こんな文章が帯には書かれている。
しかし残念ながら、
天野氏がこの本を手にとることはなかった。

というのも、この書籍が発行される
1ヶ月前に亡くなられたのだ。

ある意味、この本は私たちへの遺言のようなもの。
60年にわたって広告業界の最前線に立ってきた著者が、
広告が私たちにもたらした功と罪を、
冒頭のようなユニークな視点で語ってくれている。

またこんな話も…。
最近よく見かけるマスクをした人々。
昔は、マスクをかけている人はめったにいなかったが、
ここ最近マスク人間がどんどん増えているというのだ。

天野氏曰く、鞍馬天狗も覆面で
顔を隠しているから怖がられる存在であり、
マスクも同じ。花粉症やPM2.5もあると思うが…
確かに“異常”かもしれない。

そして最後に、天野氏が生きてきた中で最も大きな転換点として、
8・15の敗戦と3・11の大災害について書かれている。

天野流では、
「8・15で成長社会が始まり、
3・11で成長社会から
成熟社会への転換が始まる」というのだ。

あれ?
この価値観は私がこのビジ達でもよく発信する
中島流「パラダイムシフト75」の流れにピッタリである。

まさに、天野氏もいま時代は転換期を迎え、
次の時代へと移ろうとしていると感じていたということ。
そして、そのためには、
やはり地球規模な価値観で物事を見ていかないといけないということだ。

天野氏は本の中で日本を
「べっぴんの国」であるべきと表現している。
「べっぴん」と聞けば、
美人のことを言うように思いがちだが、
本来は「別品」、
つまり何か他とは違う
特別なものを意味するそうだ。

経済力にせよ軍事力にせよ、
日本は1位や2位を争う国でなくていい。
「別品の国」を目指したほうがいいと語っているのだ。

広告の視点から見た「欲望の60年」。
天野氏の最後のメッセージを、
皆さんも読んでみてはいかがだろうか。

book

まさにべっぴんな一冊!

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目からウロコのおすすめ本

02/24
2014

book

「目には見えないけれど、人生でいちばん大切なこと」木村秋則 鍵山秀三郎著

先日開催された、
鍵山掃除道50周年・
「日本を美しくする会」20周年の記念イベント。
このイベントには、
総勢850名を超す来場者が訪れた。

このイベントでは
鍵山相談役と奇跡のリンゴでお馴染み
木村秋則氏の特別対談を行った
(私がコーディネートさせていただき、
より盛り上げるアプローチをさせてもらった)。

さらに、同イベントで、
2月に出版されたばかりの、
『目には見えないけれど、
人生でいちばん大切なこと』
という書籍が販売された。

その内容は、
鍵山相談役と
木村秋則氏との対談を
編集したものとなっている。

この本では、掃除道実践者と
リンゴの無農薬栽培の成功者という
一見関係のないように見える両者が、
対談を進めるうちに、
共通項がたくさんある
ということが見えてくる。

たとえば、
“大切なことは目に見えない
土壌の部分にあった”ということ。

木村氏曰く、
ついリンゴの幹や葉ばかりに
目が向いてしまうが、
それを支えているのは根であり、
土壌に手を尽くすことが
「奇跡のリンゴ」を生み出す上で
重要だったという。

その考え方は鍵山相談役とも共通している。
掃除とは、生活の基本であり、
それを磨くことは、
人間性の成長にもつながるからだ。

人間が成長するためには、
その土壌ともいえる
身を置く環境を
整えることが大切なのだ。

また、“諦めないこと”も共通項の1つだろう。
両者とも、困難に遭遇しても、
諦めずに追求し続けてきたことで
大きな成果につながったのだ。

そして、何事に対しても“謙虚な姿勢”。
木村氏はリンゴ栽培を
「リンゴお手伝い業」とも語っている。

決して「自分が育てた」などと
言わないその謙虚な姿勢は、
鍵山相談役の
「掃除をさせていただく」
という精神にも通じるところがある。

自分はリンゴや掃除を通じて
学ばせてもらっているという、
感謝の気持ちがあるからこそ、
本当に大切なことに気づけたのだろう。

対談が進んでいくと、お2人とも、
人生において大切なものは
“目に見えない”ところにあるという。
やっぱり、諦めず追求し続けると、
共通のところに行き着くのだ。

ちなみに、先日のお2人のイベント対談でも、
それぞれの共通の価値観を理解しつつ、
次なる展望について語ってくれていた。

とにかく、この本には、
自分たちが学んだことを
後世につなげていきたいという
木村氏と鍵山相談役の
想いがあふれている。

それは、リンゴ栽培のノウハウや
掃除の仕方ではなく、
その根底にある心のことなのだ。

book

ぜひ手にとってもらいたい!

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02/17
2014

book

「どぜう屋助七(すけしち)」河治和香著

「この唐辛子を七味なんていうのは上方者だぜ。
江戸では“なないろ”っつうんだ。
さあさあ、かき回して、まず汁を飲んでみな」

そんな江戸っ子の粋な会話が展開されるのが、
昨年12月に発売された、
河治和香(かわじわか)著の「どぜう屋助七」。

江戸の浅草・駒形にある老舗「どぜう屋」を舞台に、
そこの3代目主人・助七を主人公にした、
歴史時代小説だ。

実はこの本のどぜう屋は、
以前にビジ達で紹介した
浅草にある「駒形どぜう」がモデルになっている。

“どぜう”と書くが、どじょうのことで、
どじょう汁は精の付く食べ物として
江戸の庶民に愛されてきた。

本作では、
そんなどじょう汁の店を持つ3代目助七が、
時代の渦に翻弄されながらも、
持ち前の明るさと江戸っ子の意地で
奮闘する様子が描かれている。

「『親の意見と冷や酒はあとできく』って
教えてやりゃあよかったなぁ」

これは、助七の妹が親や
自分の反対を押し切って
京に行ってしまう際の助七の言葉。
また、こんな一節も…。

「肝心なのは、金を貯めることより使うことよ。
しかも金は、大海の真ん中で
使ってもだめなんだ。
波打ち際で使わねぇとな」

などの言葉から、江戸の商人の
粋な生き方や価値観が伝わってくる。

また、初代どぜう屋で火事が起こり、
助七の時代にも再び
火事が起こってしまうのだが、
助七は諦めずに、
周りの人々と協力して再建するのだ。

このような江戸の人々の助け合いという、
人情味ある話も描かれている。

現代の利己的なビジネスに対し、
「柳の下にいつもどじょうはいない
(2匹目のどじょう)」
なんて言葉があるように、
人の成功を真似たところで
うまくいくとは限らない。

助七のような周囲との
人情味あふれる助け合いや、
粋な考えと挑戦し続ける姿勢があってこそ、
今も愛され続ける
“駒形どぜう”が存在するのだ。

実は私もどじょうには思い入れがあり…。

そう「どじょう算式相乗効果」という話。
これもどじょうとの偶然の出会いにより
生まれた概念である。
だから私も“どじょう”には一家言あるわけで…。

それはともかく、先日、
その「駒形どぜう」で6代目にもお会いし、
美味しいどじょう鍋をいただいてきた。

次回、おじゃまする時は、
是非その3代目のことや、祖父である4代目のこと、
そして代々伝わる“流儀”をたずねてみたいものだ。


book (1)

気になった方は是非書店へ!

book (2)

現代にその味を伝える6代目!

book (3)

江戸の味に舌鼓!

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01/06
2014

book

シェルパ斉藤の“ニッポンの良心”

良心くんをバックパックから出し、
北海道の雄大な光景を見せ、
そしてひまわりの横に立たせてみた。

良心くんの丸顔と、ひまわりの花。
どちらもほんわかとして、
いい勝負じゃないか、と思う。
(シェルパ斉藤の“ニッポンの良心”
その三「良心くん、オートバイで北海道を
スロー・ツーリング!」より)

これは、「シェルパ斉藤の“ニッポンの良心”」
というコラムの一節。
大きなひまわりの花と並んで撮った
良心くんの写真が添えられている。

私も北海道の出身なので、
北海道の風景はよく見たし、写真にも撮った。
でも、この良心くんが存在する
北海道の風景写真は、それまでのものとちょっと違う。

電子書籍の出版社「UP BOOKS & MAGAZINES」が
運営するウェブサイト。

ここで、日本を代表するバックパッカーである
シェルパ斉藤氏が、
全国を巡る紀行文を執筆しているのだ。

その連載の第5話は、
北海道オホーツク海を舞台に、
ホタテの漁獲量日本一を誇る
猿払村(さるふつむら)の話から始まる。

ここでも登場するのが「良心くん」。
背丈40cmほどの木製の僧侶の彫り物で、
シェルパ斉藤氏が2009年の誕生日に
奥様から贈られたものだ。

以来、現在に至るまで旅のお供をしているのだ。

そんな良心くんは、シェルパ斉藤氏との旅では
重要な役割を担っているのだ。

猿払村にあるホタテの貝でできた丘、
その中央に良心くんが立っている。
すると、その光景は途端に
何か意味のある場面のような雰囲気を醸し出すのだ。
良心くんがいなければ、
そこはただのホタテの残骸の山という“風景”になってしまう。

良心くんはただの人形ではない。
人が体験して成長するのと同じように、
旅先の空気に触れることで、
良心くん自身がそれを吸収して、
なにか特別な存在へと変化していっているようにも見える。

それが、風景に加わることで、
画面に意味を持たせ、読み手の想像力を
かきたてるのではないだろうか。

そういえば私も、20年もの間
定期的に海外へ足を運んでいる。
だが、写真はたくさん撮ったのにも関わらず、
どれも建造物や街の様子を撮影した“風景写真”でしかない。

そこで、良心くんからヒントを得て思いついた!
自分もシェルパ斉藤氏のように、
中島流“良心くん”(もしくはそれに代わる何か?)を
連れて海外を旅するのはどうだろう?

それによって、世界のいろいろな街や風景に
意味や深みが加わってくるかもしれない。

シェルパ斉藤氏と良心くんの旅の続きは、
ぜひウェブサイトで読んでほしい。
全国を旅してニッポンの空気を吸収している
良心くんに会えることだろう!

UP BOOKS & MAGAZINES
http://www.upbooks.jp/

book1

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book2

良心くんがいい演出をしている

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