12/08
2014
「庭のホテル」の上質な日常
そのホテルに広がるのは、
日常からかけ離れた非日常空間…ではない。
なぜなら、ホテルのコンセプトは
「上質な日常を提供する和の空間」だからだ。
そんな上質な日常を提供するのは、
水道橋にある「庭のホテル 東京(以下「庭のホテル」)」だ
(銀座でも台場でもなく、水道橋!?)。
2009年に開業以来、ミシュランガイドのホテル部門で
5年連続2つ星を獲得。
利用者からは、「朝、目が覚めた瞬間から、
日本にいることを実感できる」
「第二の我が家に帰ってきた気持ちになれる」
など高い評価を得ているという。
その特徴は、ビジネスホテルとも、
高級ホテルともいえない独特の和の空間だ。
中庭には緑が茂り、ちょっとした庭のようになっている。
外観からもホテルの雰囲気のよさが伝わってくる。
また、内装の程よい和の雰囲気が演出するくつろぎの空間を、
手ごろな宿泊料で楽しむことができるというのだ。
さて、冒頭でも紹介したが、
「庭のホテル」のコンセプトは
「上質な日常を提供する和の空間」。
多くのホテルが「非日常」を演出することに努めているなか、
あえて「上質な“日常”」の提供を
コンセプトにするホテルは珍しい。
その理由は、総支配人であり、
株式会社UHMの代表取締役である
木下彩(きのした・あや)氏にあった。
木下氏曰く、自分自身が泊まりたいホテルを追求したことが、
「庭のホテル」の開業へとつながったそうだ。
というのも、ホテルの改装に伴い、
どんなホテルが求められるか、
さまざまなホテルの調査などを行ったという。
しかし、最終的に決め手となったのは、
「こんな日常があったらいいな」という
自分自身の思いの具現化だったのだ。
そんな木村氏の理想を追求したホテルは、
開業当初こそ稼働率はあまりよくなかったものの、
徐々に評価され、現在では平均90%以上を誇っている。
また、国内外問わず多くの観光客が利用するばかりでなく、
上質な日常を求めて、
都内からも利用する人も絶えないという。
「庭のホテル」には、
民宿のような、和を全面に出した雰囲気も、
高級ホテルにありがちな、ラグジュアリーな内装もない。
しかし、マーケティングを駆使したものよりも、
提供する側が一番欲しいと思う空間を追求したことが、
多くの人に選ばれることに繋がったのだろう。
私は、成熟時代における
“お客様から選ばれる”ポイントは
ここにあるように思えてならない。
つまり、すでに多くの人が求めそうなホテルは多く存在する。
だからこそ、最終的に重要なのは
“自分が欲しい”というということだ。
過去のデータからではなく、お客様の声からでもなく、
“自分が欲しい”という究極のテーマなのだ。
こんな感覚と価値観を持って、
これからの“選ばれるビジネス”を追求したいものだ。