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2015
ビジネスのティッピング・ポイント
「ティッピング・ポイント」という言葉をご存知だろうか?
直訳してみると「傾く(=tipping)点(=point)」となる。
それまで小さく変化していたある物事が、
突然急激に変化する時点を意味する言葉のこと。
このところ、このティッピング・ポイントといえる
事例をいくつか耳にしたのだ。
調べてみると、
一番わかりやすい事例として紹介されているのは、
ニューヨークの犯罪発生件数について。
30年ほど前のニューヨークの地下鉄といえば、
壁は落書きだらけで、ゴミが散乱していた。
そして入り口は薄暗く、とても怖い空間だったのだ。
そんなこともあって犯罪数も多く、
危険な街としてのイメージが強かったのだが、
あるときを境に、犯罪発生件数は大幅に減ったのだという。
なぜなら、落書きを徹底的に消す「クリーン・アップ作戦」や、
無賃乗車を徹底的に取り締まる活動が開始されたからだ。
まさにこの施策が「ティッピング・ポイント」となったといえるだろう。
最近「ティッピング・ポイント」を感じたのは、
先日お会いしたメゾンカイザーの代表である
木村周一郎氏から聞いた話だ。
メゾンカイザーでは、
フランスの伝統的な製法でつくった
天然酵母パンを販売している。
こだわりの展開をしているパン屋だが、
オープン当時は100本焼いたバケットが14本しか売れず、
残ったバケットは街頭で試食として配っていた。
数ヶ月経っても1日に売れるのは10数本で、
厳しい状況が続いていたそうだ。
しかしあきらめずに続けたその行動が、
半年後のクリスマス・イブ、ついに実を結ぶことに。
なんと、最初は14本しか売れなかったバケットが
急に500本以上も売れたのだ!
(このクリスマス・イブを境に、
順調に売れるようになったのだとか)
メゾンカイザーにおいての
ティッピング・ポイントが現れたのは半年後だったが、
このポイントがいつ現れるのかはわからない。
あるタイミングで、急にやってくるのだ。
例えば、鍵山秀三郎氏が
30代前半から始めたトイレ掃除や街頭清掃。
始めは鍵山氏1人で行っていたというが、
ちょうど10年経った頃、
社員が1人、2人と一緒に清掃するようになっていった。
そして20年経つと、外部の会社の人々が、
鍵山氏の会社に視察体験に来るようになったという。
ビジ達でもおなじみのパン・アキモトでも、
最初はパン缶がなかなか売れなかったというが、
あることがきっかけで販売数を延ばしている。
先日もご紹介した天狼院書店も、
そのときが訪れるのを待っていたかのように、
継続していた出来事があるタイミングで
ティッピング・ポイントを迎えている。
ビジネスにおいて、
このティッピング・ポイントは
とても重要なものだといえるだろう。
ある一定のレベルに加え、
何らかの仕掛けも必要だと思うが、
我慢を続けて徹底する意識が重要なのだ。
しかし、ティッピング・ポイントが訪れる前に
諦めてしまう人も多いことだろう。
もちろん、いつ訪れるかなど誰にもわからないのだ。
だからこそ、自分のビジネスを信じて進めていき、
できることをしっかりとやり続ける。
それこそが、ティッピング・ポイントを
呼び寄せることにつながるだろう。