06/06
2016
大和民族的“先義後利”
ビジネスシーンが国際化したいま、日本のビジネス界も
短期的・利益優先型の欧米的価値観で動いていると
言っていいだろう。
だが、われわれが本来持つ大和民族的価値観は
欧米のそれと大きく異なるのではないかと、近頃強く感じる。
TPP交渉がすすみ、ビジネスの場で欧米的価値観と
ぶつかりあう機会が増えるであろう今だからこそ、
大和民族的価値観を改めて認識するべきだ。
では、大和民族的価値観とは何か? それは…。
縄文時代を含めると、日本の歴史は1万5千年と非常に長い。
さらに、日本人は島国で農耕民族として発展を遂げ、
季節で変化する自然の摂理を受け入れてきた素地があることから、
長期的な視点でものごとをとらえることができる傾向にある。
対するアメリカは今年の2016年で独立から240年と歴史が非常に浅く、
ルーツであるヨーロッパは他国と地続きの狩猟民族。
獲物を効率的に狩ることが狩猟民族の本質で、
自分の獲物を確保できない時は人から奪う必要もある
ということで短期的なものごとの見方をすることが多いと言える。
加えてアメリカは多国籍・多民族国家で
最大公約数的意見を見出すのが非常に難しく、
自由を掲げての合理主義を選ばざるを得ないのだろう。
アメリカではこうした背景から、結果として
自分を優先しがちで、短期的、利益優先型の価値観で
ビジネスが動くことがほとんどだ。
アメリカのビジネスシーンでは、
“Think global, act local
(世界的な視野を持ち、地に足を着けて動く)”
という言葉をよく耳にする。
これも大切な視点ではあるが、中島流としては
“Think longrange, act tomorrow
(長期的な視野をもち、明日からの歩みを決める)”
という言葉をいま、提唱したい。
アメリカからは、まず発信されないフレーズだろう。
虎屋、石川酒造、千疋屋総本店そして金剛組など
数百年の歴史を持つ企業が日本に数多くあるのは、
その先の子孫の代を考えて経営しているからこそなのかもしれない。
千疋屋総本店を経営する大島家の家訓は
「勿奢(おごることなかれ)、勿焦(あせることなかれ)、
勿欲張(よくばることなかれ)」。
まさに、短期的な利益を追求することよりも、
長く続けることを優先するという大和民族型の経営観が見て取れる。
私がそんな大和民族的価値観の中で最も重視するのは
拙著「儲けないがいい」にも登場する“先義後利”だ。
社会や地域の未来を見据え、
義を優先する経営にこそ続ける意味があるというのは、
非常に大和民族的で、得がたい貴重な価値観だと思っているからだ。
美徳ともいえる大和民族的価値観を失わないために。
そして、日本人らしさを見失わないためにも、
“先義後利”の考えを貫いていきたいものだ!