06/17
2019
“0~1”の実践者たち
木村秋則氏といえば、完全無農薬の
“奇跡のリンゴ”で知られる農業の偉大な先駆者だ。
1978年にリンゴの無農薬栽培を志したものの、
失敗に次ぐ失敗で、やっと花をつけるようになったのが8年目。
販売できるようなリンゴになるまではさらに遠く、
10年以上無収入が続いたという。
そんな彼の著作『リンゴの花が咲いたあと』
を読んでいて、実感したことが1つ。
それは、「“0~1”を成し遂げた人は、
そのあと社会のために貢献する」ということだ。
常識破りの無農薬リンゴという“0~1”を
成功させた木村さんは、
そのあと少年院でのトマト栽培指導に携わることになる。
当初少年院にいる子どもたちは、文句ばかり言っていたという。
「なんでこんなことしなきゃならないんだ」と。
しかし、木村氏は
「農薬・肥料に頼らないトマトの持っている力を信じて、
何も与えず育てなさい」と言い続けた。
次第に子どもたちはトマトの生育を熱心に観察し、
自分のトマトの出来栄えを競争するようになっていく。
買ってきたトマトはすぐ食べても、
自分で愛情を注いで育てたトマトはもったいなくて食べられない。
こうして“育てる喜び”を知ると、
自然と親の愛情も痛みも分かるようになるのだそうだ。
すねていた子どもたちの口から自然と
「お父さん、お母さん、ごめんなさい」
という言葉が出てくる…。
著作の中では、少年院を出た少年少女が夫婦になり、
立派にやっていく姿も描かれている。
全ては木村さんの農業を通した指導の賜物。
こうした社会貢献は、損得勘定でできるものではないだろう。
一切を越えた人の“悟り”によって実現していると言ってもいい。
リンゴの無農薬栽培という、
とてつもない“0~1”を成し遂げたからこその悟りだ。
考えてみれば、ユーグレナ社の出雲社長、
TBMの山崎社長、そして鍵山秀三郎相談役も、
皆偉大なる”0~1”の実践者にして、
多くの人に影響を与える社会貢献家。
残念ながら悟りとは遠いところにいる私だが、
自分なりに学んだ石田梅岩によれば、
こうした悟りは“見性悟道”という仏教の言葉で表される。
悟りを開き、道理を会得すること。
そのためにはきっと、誰もが挑戦さえ
諦めてしまう“0~1”の実践が必要なのだ。