06/19
2017
ビジネスも“愚の如く、魯の如し”
「潜行密用(せんこうみつゆう)は愚(ぐ)の如く、魯(ろ)の如し」
本当に大切なことは人知れず行い
利益のみで動くのではなくて
目立たないことにベストを尽くせ、
という意味の禅語だ。
かく言う私も禅に詳しいわけではないのだが…
先日海外研修でサンフランシスコに行った際
この禅語に出会い、学ぶに値する言葉だと感じた。
あのアップルのスティーブ・ジョブズ氏も
禅語の影響を受け、
「ハングリーであれ、愚か者であれ」
(Stay hungry,Stay foolish.)
という象徴的な金言を生んだのだと言われている。
そうすることで、革新的な新しい機器を
開発できたのではないだろうか。
実はこの“愚の如く、魯の如し”に近い禅の話として
以下のような師匠と弟子のやりとりが教えられている。
弟子が熱心に坐禅をしていると、
師匠に「何を思って坐禅をしているのか」
と問われ、「悟りを開き、成仏するためだ」と答えた。
すると師匠は、おもむろに1枚の瓦を持ってきて磨きだした。
それを見た弟子が「瓦を磨いて何をするのか」と聞くと、
「瓦を磨いて鏡にするのだ」という。
弟子が「瓦を磨いても鏡にはならない」と言うと
師匠は「坐禅をして仏になれるのか?」と言い放たれた、
という話だ。
これはつまり、坐禅をすれば仏になれると思う
弟子に対して諭した言葉だ。
ついつい坐禅をしていると、
所得の意識がつきまとってしまうもの。
修業とは悟りへの手段ではなく
修業そのものが悟りなのだから…。
現代でこの“愚の如く、魯の如し”を徹底している人は…
おおっ! まさに鍵山相談役の掃除道50年!(もう53年かな!?)
鍵山相談役が10年間徹底して掃除を行っているうちに、
自然とその頃から社員が手伝いを始め、
20年経つと別の会社からも掃除道を学ぼうと
人が集まって来たという。
やはり何かを徹底していると、
本来目的としているわけではなくても
周囲や自分自身が変化してくるという。
そこに坐禅や、掃除を徹底して行う意味があるのだ。
まさに「潜行密用は愚の如く、魯の如し」
というのはそういう意味なのではないか。
わたしがよく口にする、
“チャレンジ力は、リスク回避力の2乗に比例する”。
これにおいても同じようなことが言える。
つまり、ビジネスにおいても経営者としても
徹底して何かにチャレンジし続けることは、
リスク回避力が次第に身に付き、結果として
次なる大きなチャレンジにつながるのだ。
ジョブズ氏ほどの活躍でないにせよ、
“愚の如く、魯の如し”を実践し
それなりの結果に結びつけたい。
あれっ、これって所得の意識で坐禅をしてしまっている!?
とにかく、「潜行密用は愚の如く、魯の如し」。
私たちのビジネスにおいても、
耳を傾けるべき教えと言って間違いないだろう。