06/26
2017
功には禄を、徳には地位を
“功には禄を、徳には地位を”
功績があるものには報酬を与え
人徳があるものには地位を与えよ、
という意味で、かの有名な西郷隆盛氏の
南洲翁遺訓にも記されていた言葉である。
先輩のコンサルタントがこの言葉を
よく口にしており、私も共感を抱いていた。
興味を持って調べると、
西郷氏がつくったというよりは紀元前1600年前の
中国の最も古い経典、「書経」の中にある
「徳の高いものには官位を上げ、
功績の多いものには褒賞を厚くする」
という言葉が元になっているという。
えっ何と今から三千数百年前には
既にこの価値観が生まれていた…と。
つまり紀元前1600年前も、どんなに功績が
あっても職務に不適切な者を官職につけてはならず、
人を指導し、育むことには向かない人間が
かなりいた、ということ。
たとえば、野球やサッカーで選手として
素晴らしい実績を打ち立てたとしても、
コーチや監督としていい活躍ができるとは
限らないことと同じである。
(そんな監督もいたねぇ~)
エンジニアやデザイナーなど、
どちらかというと狭く・深く物事に取り組む
スペシャリストにはなれても、物事を広く・より深く
捉える“ゼネラリスト”になれるかは別。
人を育て、組織全体のことを考えて
どのように行動するかはゼネラリストの領域なのだ。
私も社員採用の面接をしていた時、対象者に
会社の一員としてゼネラリストを目指してほしい
という話をしていた。
会社というのは組織で動くもの。
そしてお客様が求めているのは、
スペシャリストのスキルだけでなく、
相手の会社のことを考えられるゼネラルな
視点だと日々感じていたためだ。
今も昔も、求められているものは変わっていない。
これまで、よい成績や結果を残せば
それを地位に反映し、組織をダメにしてきた
事例がたくさんあった。
すなわち、私たちが人事を考える時、
組織を考え上司として部下に
どう接しているかという点も重要なのだ。
そこで二重の発想がカギを握っている。
功績によって報酬を与えたとしても、
地位とは別に物事を考えた方がよいということだ。
そのことが、この“功には禄を、徳には地位を”
という言葉に集約されている。
常にこの言葉のバックヤードにある奥行きを
理解することが、経営を成功に導く秘訣と言えそうだ。