05/12
2014
勝機は登り坂にあり
先日、セブン&アイ・ホールディングスのCEO、
鈴木敏文会長がテレビ番組でお話されているのを視聴した。
実は私も以前、情報誌の取材で1時間ほど
お話させてもらったことがあるのだ。
その時から感じていた
(そしてテレビ番組の視聴で改めて感じた!)
ことなのだが、鈴木会長はマーケッターとして、
実に優れたセンスの持ち主である(経営者としては…??)。
なぜかというと、
多くの人が選びやすい道を選ばず、
常に大変なほうの「登り坂」で勝負してきた人だからだ。
選びやすい道=「下り坂」というのは価格競争のこと。
例えばだが、私が勝手に「おにぎり事件」
と呼んでいる事件がある。
当時コンビニエンスストア各社では
“おにぎり”に注目が集まり(競合状態)、
セブンイレブンとしても
他社にどう差をつけるかの会議が開かれた。
中心価格帯が100円だった時のことだ。
その時のプレゼンターであるスタッフは
“90円”の提案を打ち出した。
それに対して鈴木会長は即座に却下したという。
「だったらウチは130円、
150円のおにぎりを作ればいい。
安さの競争に勝者はいない」と。
実に明確にして正当な理由ではないか。
その昔にも鈴木会長は
「チャーハン販売休止事件」を起こしていた。
当時のチャーハン弁当は、
チャーハンとは名ばかりの
炊き込みチャーハンだったという。
ある時それを口にした鈴木会長が
「こんなものはチャーハンではない!」
と販売中止を命じ、
その後一年半もの間改善に取り組んだという
(実は、かなり売れていた商品だったのにだ)。
こうして試行錯誤の末にできあがった
チャーハン弁当は大ヒット商品となった。
それまでも売れ筋商品だったが、
それを捨てて本物を追求することで大ヒットにつなげたわけだ。
昨今話題の「金の食パン」にも同様のことが言える。
コンビニで買う食パンとしては高価だが、
材料、製法にこだわりぬいたおかげでヒット商品となった
(実は先のテレビ番組はそれのおにぎり版、
“金のおむすび”発売をきっかけとした番組だったのだが…)。
つまり、
鈴木会長は常に商品そのものと
付加価値で勝負してきたのだ。
価格での競争は、一見楽ではあるが、
そこには未来がないのだ。その考え方は、私も一緒だ。
私たちのビジネスでも、
○○さんは同じ仕事をもっと安くやってくれましたよ…
とほのめかされることもある。
でも、私は毅然として
「だってウチは質が違いますから」と言い放ってきた。
安さで勝負してしまえば、
もっと安く仕事をするところは必ず現れる。
そんな価格での土俵で勝負してしまうと、
その選択肢はなくなり、悪循環に陥ってしまう。
価格を下げるという安易な方法=“下り坂”
で勝負するのは一見楽なようでいて、
自分の首を絞めることにつながるのだのだ。
それなのになんと多くの事業主が
安易に価格で勝負を挑むことか!
価格で選ぶ人はもちろんいる。
でも、価格で選ばない人もいる。
その価格で選ばない人に照準を合わせるべきなのだ。
価格だけで選ばない人は、
今後少しずつ少しずつ多くなっていく。
その人たちに向けて、
私たちは常に“登り坂”での勝負をしなければならない。
何といっても本当の勝機は“登り坂”にしかないのだから!