05/12
2014
「釜石の奇跡」もひとづくり
「津波てんでんこ」をご存知だろうか。
これは、「津波が来たら、家族のことを考えず、
すぐにてんでんばらばらに逃げなさい」という
三陸地方に伝わる教えのこと。
この言葉が有名になったきっかけは、
東日本大震災でニュースにも取り上げられた、
岩手県釜石市内の小中学校だ。
これらの学校では、
「津波てんでんこ」の教訓に基づいた
避難訓練を何年も行ってきた。
だからこそ、巨大津波に襲われながらも
生存率99.8%という成果を上げ、
「釜石の奇跡」と呼ばれたのだ。
その避難訓練を指導していたのが
群馬大学教授の片田敏孝氏だという。
片田氏いわく、人を守るのに必要なのは、
高い堤防ではなく、
「津波てんでんこ」の教えを
徹底することだという。
これを中島流に解釈するならば、
人を守るためには「人をつくる」ことが大切だということ。
堤防などの物に頼るだけでなく、
どんなことにもフレキシブルに
対応できる人をつくることが重要なのだ。
それが顕著に現れたのが、
震災で大問題を引き起こした東京電力だろう。
震災当時は危機回避のための
システムをつくっていたというが、
結局は機能せず、
すべてが危機にさらされてしまった。
まさに、システムという“堤防”は
崩れ落ちてしまったのだ。
人を守るのは物ではない。
いつ危機が起きても対応できるよう、
高い意識や習慣を
徹底していくことが大切なのだ。
そういえば、先日アルファセミナーでも語っていただいた、
老舗うなぎ専門店「野田岩」の金本氏は、
次代の職人を徹底教育することを
大切にしていると話していた。
それは、5代目自ら率先垂範すること。
これにより、周りの職人や見習いたちは
質の高い技や先代の志を学び、
受け継いできたのだろう。
この「人をつくる」教育があるからこそ、
創業した江戸時代から現在まで、
人々に選ばれるうなぎづくりを
継続することができたのだろう。
人間の世界では身を守るために、
ビジネスにおいては継続のために、
“人づくり”が求められるのだろう。
この“人づくり”がまた難しいのだが…。