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2020
まず~い。もう一杯!
あの「まず~い。もう一杯‼︎」は
CM制作側からの台詞ではなく、
悪役商会・八名(やな)信夫さんの現場でのひらめきだという。
今思えば、若い人たちも八名さんを知っている理由は
役者としての八名さんではなく、
あの「まず~い。もう一杯‼︎」の青汁のオジさんなのだ。
今回の講演会に現れた八名さんは、背丈もあり、
その姿勢も出立ちもカッコよく、その年齢には到底見えなかった。
(なんと、85歳だという)
話は戻るが…(広告業界の者として)
確かにクライアントへの提案で、いくら“青汁”といえども
「まず~い!」の絵コンテはさすがに提案しにくい。
もしかしたらその広告代理店はその案のプレゼン一発で
出入り禁止となるかもしれないのだ。
また、撮影現場で、あの八名さんがあの顔で
「だから…青汁なんだから“美味しい”なんて言うより、
”まず~い”って言っちゃった方がインパクトあるけどなぁ~」
なんていうと誰も“いや”とは言えないかもしれない。
(これは私の勝手な想像だが…)
というわけで、ご存知のようにあのCMは話題となり、
“キューサイ青汁”も八名信夫氏も改めて
注目されることになるわけだ。
この事例からも分かることだが、
八名さんはその物語りにおける“悪役”の役割をしっかりと理解し
プロとしての追求があるからこそ、世間の人たちが自分を
どうポジショニングしているかも分かっているわけだ。
“この顔”が悪役の代名詞となったのも
八名さんの“悪役”としての徹底追求の証ということ。
こんなエピソードも話してくれた。
実はあくまで悪役ではあるが、俳優として認められ、
ロケ地でもひと部屋与えてもらえるようになったとき
嬉しくて早速母親に報告の電話をしたという。
すると、母が言ったことは、
「そんなことより、人様に自慢できる配役に
早くなって欲しい」と。
例えば…「今、主役の方に斬られて大きくもんどり打ったのが
うちの息子なんですの…」
(うんうん、家族の気持ちも分かる)
とにかく悪役であり、斬られ役、撃たれ役は、
物語において、その命は短く存在も薄い。
それでも物語における存在理由は大きいのだが…
八名さんは悪役を中心に61年間俳優をやってきたという。
素晴らしいことである。
どの業界でも、例え“悪役”業界でも、
「もっとも強い者が生き残るのではなく、
もっとも賢い者が生き延びるのでもなく、
唯一生き残るのは…その役割を追求し続けてきた者だけが生き残るのだ」
どっかで聞いたことがあるフレーズだが…
八名信夫さんに捧げたい。
セイジ・ダーウィンより