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2013

『とこトン村の花子』 ささざきよしてる 著
とこトン村に生まれ、大きな鼻をした花子は、
鼻の大きなことを理由に友達から
たびたびいじめられていました。
しかし転機は突然現れます。
花子はお父さんにおべんとうをもっていきました。
草むらにねころがった花子は、
おもいっきり山の空気をすいこみました。
「おや?」花子は、たおれた木の穴の方から、
いい香りがしてくるのに気づきました。
「?!?!……」花子の鼻がピクピクうごきます。
花子は、そばにあった、スコップをかりて、
穴をほりはじめました。やはり穴のなかから、
ほんのりいい香りがしてきます。
その日から、花子はひとりで
穴をほりすすめることにしました。
この物語は、ささざきよしてる氏作の
絵本『とこトン村の花子』の一節だ。
そこに登場するのは、すべて豚のキャラクターたち。
鼻が大きいことでいじめられていた花子が、
そのコンプレックスだった鼻がきっかけで温泉を掘り当て、
みんな仲良く過ごせるようになった…というストーリー。
実は「ささざきよしてる」とはペンネームで、
実名は笹崎静雄氏という。
笹崎氏はなんと、埼玉県日高市で
つくられる絶品ハムが有名な
サイボクハム(埼玉種畜牧場)の
社長でもあるのだ。
そのサイボクハムにはテーマパークを
彷彿させる集客力があり、
年間350~400万人が訪れるという。
そんな人気の牧場を経営する笹崎氏が、
どうして絵本をつくろうと思ったのだろうか。
もちろん、絵本がその昔から
好きだということはあったようだが…。
そこには3つの理由があるという。
1つ目は豚や地域への感謝の気持ち。
サイボクハムの人気の理由は、
ただ美味しいと言うだけではない。
商品である豚に対してや地域の人たち、
働く人への感謝の気持ちがあって
サイボクハムは成り立っているからだ。
次に絵本にはその国の文化が反映するから。
日本特有の地域や仲間を思いやる気持ちを
表現するのにぴったりなのだ。
3つ目は生物多様性。
人はそれぞれ個性を持っている。
それはごくごく当たり前のことで、
それを活かしていけば
それぞれのところで貢献できる
ということを伝えたかったという。
うんうん、絵本も奥が深いね~。
絵本とは、子どもにとっては
いろいろなことを知る大切な入口なのだ。
実は私はこれまでにサイボクハムを何度も訪問している。
5回、いや6回だろうか。訪れるたびに新しい
プラスアルファがあることに驚いているのだ。
肉やハム、野菜が所狭しと陳列されており、
食のテーマパークのようでもあるし、道の駅風でもある。
先代の社長は何度かお話を伺ったことがあるのだが、
まさか現社長が絵本を出しているとは…。
この絵本を読んでいると、
笹崎社長の豚への感謝の気持ちと
思い入れが伝わってくる。
ところでこの絵本、サイボクハムの
お店で売っているのだろうか…。
今度確かめてみよ~っと。