10/11
2016
『サービスの達人たち』野地秩嘉・著
あなたはベンツの新車セールスマンだ。
会社が設定した月間ノルマは5台だが、
今月は、月末を待たずに達成してしまったばかりか、
2台もの追加注文が舞い込んできた!
急いで月末までに納車することもできるが、
来月初めに納車すれば、翌月のノルマ達成はぐんと楽になる…。
そんな状況になったら、あなたはどうする!?
…これは “サービスの極意”を追求する達人を取り上げた、
野地秩嘉(つねよし)・著、『サービスの達人たち』
というノンフィクション中のエピソードなのだが…。
これは飛び込み営業でベンツを年間100台売る
辣腕営業マンが語ったことだそうで、
彼は迷わず2台とも月内に納車する、と続けている。
というのも、2台分のアドバンテージを持つことで、
自分の中に「甘え」が生まれるのが怖いからだとか。
ふむふむ、さすがだ。こういう考えでなければ
年間100台なんて売れないだろう。
…この本には、彼のような究極のサービスを追求する8人の達人が
オムニバス形式で登場する。その8人を以下にご紹介しよう。
1.「飛び込み営業」でベンツを日本一売る男
2.「戦後最高」カフェ店主の神接客
3.「デパ地下の女王」とんかつ娘の気迫
4.「稼働率100パーセント」ビジネスホテル支配人夫婦のもてなし
5.「客を母と思え」もつ焼き屋の流儀
6.「餅つき」だけで繁盛旅館をつくった主人
7.保育園業界トップクラスに躍り出た「革命児」の哲学
8.クレーム「ゼロ」熾烈な競争を制するカリスマ美容部員
彼らの話を読みながら感じたのは、
私が発信する選ばれるための7か条、
“新・選ばルール7”に当てはまるなぁ…ということ。
それも、7つのなかの4項目
・とことん追求する
・手間をかける
・大胆で潔い
・徹底の二乗
に、とりわけ共通するものを感じたのだ。
例えば先のセールスマンがノルマ達成を到達点とせず
車を売り続けるのは、まさに選ばれる理由といえるだろう。
他に気になったのは、
“「デパ地下の女王」とんかつ娘の気迫”だ。
これはとんかつ専門店「まい泉」の販売員で、
全国の精鋭が集まる日本橋三越本店のデパ地下で
店長に抜擢された人物の話。
「まい泉」の1店舗あたりの売り上げは、1日80万円。
彼女はそれを3%の商品ロス率で達成しているとか。
彼女は日本橋三越本店の店長に就任してから毎日、
商品の“売れる・売れない理由”に着目し、記録を続けた。
やがて、その商品が売れるか、なぜ売れないか、
どんな商品を開発すべきかがわかるようになったそうだ。
さらに売り場を離れ、売れている他店を見て分析したり、
そこに自分なりのアレンジを加えたり…と、
とにかくとことん、売るための手法を追求し続け、
商品ロス率3%を維持したという!
まさに、これも例の4項目に合致するではないか!
どの“サービスの達人”たちも、「ビジネスの達人」と一緒で、
選ばれるためのルールづくりを徹底し、
追求しているのだなぁ…!