10/20
2014
広島掃除に学ぶ会の仕事道
さて突然だが、広島では、
暴走族が地域住民の多大な脅威となっていた。
1999年には、機動隊と暴走族が
激突するという事態にも至っている。
地域住民の安心、安全のためにも
そのままにするわけにはいかない。
紆余曲折を経て、その年の12月に
全国初の「暴走族とのトイレ掃除」を実施。
鍵山相談役、暴走族のメンバー22名、警察官、
自治体職員、掃除の会関係者などの計152名が参加した。
こうした取り組みが1つの突破口となり、
暴走族は次第に解散、
荒れる若者が徐々に減っていったのだそうだ。
こんな話をしてくれたのは、
「広島掃除に学ぶ会」の井辻栄輔氏。
掃除の会の情報誌に、鍵山相談役との巻頭対談で
登場してもらったときの話だ。
私は今まで本部に近いところで
掃除に学ぶ会に参加してきたので、
全国各地の掃除の会については、
深く知らないというのが実際。
しかし、井辻氏のお話を伺って、
改めて掃除のパワーを実感したのだ。
広島掃除に学ぶ会は、
今年10月で19周年を迎えたそうだ。
全国各地の「学ぶ会」は、大体20周年前後の
ところが多いので、特別に歴史が長いというわけではない。
驚くべきはその密度!!
延べ実施回数は372回(年平均にすれば20回)、
延べ参加人数は約50,000人!
この数字は全国でも断トツのトップだ。
そしてそこには、先も述べた
広島という土地柄が深く影響しているのだという。
広島掃除の会の19年の中では、暴走族との掃除だけではなく、
地域の中学、高校での掃除も大きな出来事として取り上げられる。
退学率が高く、荒れに荒れていたとある高校では、
教頭先生からの相談により、トイレ掃除が実施された。
鍵山相談役は、この時強く
「連続して行うことが大切です。少なくとも3回は行いましょう」
と仰った。
そして、実際には連続して5回の掃除が実施されたのだ。
するとみるみるうちに生徒たちに変化が表れ、
中止されていた体育祭が7年ぶりに
実施されるまでに至ったのだという。
他の中学校でも同様のエピソードがあり、
荒れていた中学が今ではモデル校として
表彰されるまでになっているらしいのだが…。
先生方やPTAの方々には、
掃除が新たな問題を生むことを恐れ、
反対する人も多かったそうだ。
しかし、理屈抜きにまずはチャレンジしようという熱意が、
実際に功を奏した。
何につけても、変化を渋っていては進化できないということ。
一生懸命にトイレを磨き、一生懸命に掃除する。
本人の清々しさは、見ている人にも影響していく。
また、きれいな環境がそこにいる人々も変えていく。
そして、そのことを信じてとにかく実践に励む。
それらがより人間力を磨いていくことになる。
こうした一連の流れを、
論理的に解説することは難しいだろう。
しかし、お金や表層的な損得ではないところで、
確実に社会に貢献することができるのだ。
そこには、掃除の会の強い存在理由が発生してくる。
地道な活動と熱意が、
こうした存在理由=仕事道になっていくのだ。
掃除が単なる「掃除」にとどまらず、
人の心、ひいては地域社会に大きな影響を及ぼせるということ。
改めて、掃除の会に「学ぶ」対談だった。