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シナジースペシャル

04/28
2014

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“先用後利”はシナジーの源泉

先日、富山の売薬ビジネスについての本「富の山の人」
の著者森田裕一さんからお話を伺う機会があった。

実に興味深いお話だったのだが、
とりわけ私の心に響いたのは富山の薬売りという
ビジネスモデルを表す言葉、「先用後利」だ。
どこかで聞いたことがある?
私が良く言う「先義後利」の一字違い!
…なんてことだけじゃなく、この「先用後利」という言葉に、
富山の人の深い知恵と生き方が表されているのだ。

「富山の薬売り」については皆さんもご存じだろう。
家庭ごとに予め薬を何種類か置いてゆき、
半年ごとに使った分だけ料金を受け取っては薬を補充する。
良くできたもので、
家庭ごとによく使われる薬を知ることができるのだから、
販売しながらマーケティングもできるのだ。
薬商人たちは、自分の顧客の家族構成・使用した薬・集金額などを
詳細に記した「懸場帳(かけばちょう)」
と呼ばれる顧客リストを持っている。

私が分析するには、懸場帳には実に4つの役割があるのだ。
まず第1にその家族のマーケティングデータとしての役割。
第2に、健康状態を把握できるカルテとして。
第3に販売の際のコミュニケーション情報の材料として。
第4にこれらのデータが集積された、
市場調査の記録簿としての役割も果たしている。

「先用後利」には、この懸場帳が欠かせなかったという。
後に、懸場帳自体が高額で取引されたというのもうなずける。
今だって、裏付けのあるマーケティングデータは皆が欲しいものだ。

また、薬売りたちはあえて離れた地域に
(例えば北海道と岐阜!)ばらばらに顧客を持っていた。
これはもちろん、あちこちで情報収集をするため、
ということもあるが「リスクを避ける」
という意味もあるのだという。

1つの地域に集中して顧客を持ってしまうと、
そこで大干ばつなどがあった場合、
皆がお金を払えなくなってしまう。
しかし、離れた地域に顧客を持っていれば
こうした心配はないということ。

富山の薬売りたちは、こうして各地で集めた情報を
富山に持ち帰っては共有し、また全国に出て行った。
そして今度はそれらの情報をいろいろな地域に発信した。

顧客の中にはお医者さんも…
なんて、嘘みたいな話もある。
これは、薬はもちろんだが「富山の薬売り」が持ってくる
情報も欲しかったのではないだろうか。

今のように情報収集する手段がない時代、
薬売りがもたらす各地の情報は貴重なものだったに違いない。
彼らは薬だけではなく、情報も売っていた(?)わけだ。
こうした商売に、勤勉な姿勢が欠かせないのは当然のことだ。
薬を作り、マーケティングデータに沿って販売し、
各地の情報を集めながら顧客に必要な情報を提供する。

富山の人が勉強好きで良く働くと言われるのも、
「先用後利」と懸場帳の存在のおかげではないか。
「先用後利」というビジネスモデルがあり、
そこから発生した懸場帳があり、
さらにそれを活かし実践する勤勉な富山人ができ上がる。
なるほど、これは相乗効果の為せるワザだ。

まさに「先用後利はシナジーの源泉」!
この言葉と懸場帳によって、ビジネスも人も発展していったのだ。

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森田裕一氏のお話から!

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意表を突くスライドも交えて…

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実に分りやすく、聞き入ってしまう語り口

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聞き入るセミナー参加者たち!

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