12/17
2012
第26回 秋山木工の修了式
たった1人のために開かれた修了式。その1人のために総勢70名が集まった。
修了生は、その70名のために、きれいな家具工芸の贈答品を作る。
(これがすばらしいものなんだなぁ~)
先日、私は秋山木工の修了式にお招きいただいた。
修了生の人数の少なさにも驚いたが、
私を最も驚かせ、感動させたのは、
その1人が女性であり、その態度、言葉をとっても
しっかりとその成長が読み取れることだ。
さすが、秋山木工の丁稚、修了生である。
「学校卒業後、40年は職人をやるわけで。
すると丁稚の期間はわずか1割程度 」
その修了式の中でこう語るのは、
既に秋山木工を離れ、職人として
活躍している彼女の先輩。
長い職人人生において4年間の丁稚生活とは、
ほんのわずか。
しかし、その1割がこれから生きていくうえで、
大きな礎となるのだと語っていた。
まさにロングレンジで物事を捉えると、
こういう発想になるわけだ。
これこそ中島流“お金でない報酬”。
彼らはお金や技術ではなく、
4年間で「人間」を磨いていたのだ。
(秋山木工の従弟制度はさすがだね~)
今回、唯一の修了生である彼女は、
正確には4年と8ヵ月の間、丁稚だったそうだ。
その前に大学と専門学校に通っていたので、
計10年と8ヵ月間修業し続けていたことになる。
普通に考えれば長い期間だが、
彼女を見ているとその期間も
確実に活かされた時間だったと感じる。
私を含め、そこにいた70名が、
彼女の立派なあいさつを聞き、そう思ったに違いない。
(人づくり、職人づくりの成果だね~)
最近では学校を卒業後(学生のうちにも)、
あせって稼ごうとする人や起業する人が多い。
しかし、それでは人として
大切なことは身に付かない。
稼ぐことより、まず人間性を身に付け、
自分の“存在理由”を見つけることが重要なのだ。
彼女のお祝いに来ていた両親は、こう語った。
「従弟制度がこの秋山木工から
日本中に拡大されること、
職人の方々が増えることを願っています」
こんな親の想いを抱えながら、
彼女は一体どんな職人への道を
歩み始めるのだろうか。
秋山木工が生んだ55人目の職人が、
今後どう成長するのか、私は密かに
期待したいと思う。
ちなみに、土地は北海道の北見だと。
職人としてのお礼奉行が終了したら(3年4か月後)
北海道に戻って職人として活躍するという。
こりゃー、再会するのが、楽しみ楽しみ。