02/25
2013
本当の出版業界の危機とは
“儲かる”
“億万長者になる”
先日、新宿の紀伊國屋書店を訪れたときのこと。
ビジネス書のコーナーに
平積みされている本のタイトルは、
どれもそういった、人の欲をくすぐるようなタイトルばかりだった。
出版業界は今、電子書籍の登場によって、
最大の危機に直面している。
かつてデジタルカメラの登場で
経営破たんまで追い込まれたコダックや
危機的状況に追い込まれた富士フイルムのように、
まさに抜き差しならない決断を迫られているときと言ってよいだろう。
そんな状況にも関わらず、
書店で平積みされている本はこのような本ばかりだ。
ソフトバンク・孫正義氏
『億万長者 富の法則』
ユニクロ・柳井正氏
『ユニクロ思考術』
日本マクドナルド・原田泳幸氏
『「世界で勝つ」ための鉄則』
セブン&アイ・ホールディングス・鈴木敏文氏
『セブン-イレブン・ウェイ日本から世界に広がる「お客さま流」経営』
ローソン・新浪剛史氏
『個を動かす 新浪剛史氏 ローソン作り直しの10年』
サイゼリヤの創業者・正垣泰彦氏
『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』
等々。
どの本をみても、大企業の経営者が取り上げられ、
目を引くタイトルが付けられている。
しかし、果たして本当にこれら経営者たちのやり方を
真似することがよいことなのだろうか?
ストレス社会・地域文化の崩壊・格差社会という
現代社会が抱えている問題…。
実はこれらの問題をつくり出しているのが、
まさにいま紹介した本の筆者や題材にされている
大企業の経営者たちなのだ。
それにもかかわらず、出版業界は、
そんな問題には目もくれず、
目先の売り上げだけを考えて、
こんなビジネス本を出版し続けている。
いま、声高に言われている出版業界の危機。
本当の危機は電子書籍の登場ではなく、
目先の売り上げばかりに気を取られ、
本来出版すべきものを見失っていることに
あるのではないだろうか。
ちなみに、私の書籍のタイトルは、
『非効率な会社がうまくいく理由』
『儲けないがいい』
いま紹介した本とは、タイトルも内容もかなり違う。
果たしてどちらが売れるのか…っ!