01「サステイナブルツーリズム」
- ■ 観光産業の新たな可能性
- ■ 環境保全に配慮した観光開発
観光は今や重要な産業の1つであり、今後ますます成長が見込める分野だ。だが、世界遺産に指定され観光客が増えた富士山でごみ問題が深刻になるなど、地域の文化・自然・生活などを破壊する従来の観光に疑問の声が上がっている。そんな中、将来の世代に地域の環境・文化を残せるような持続可能な観光産業『サステイナブルツーリズム』が注目されている。
サステイナブルツーリズムの基本理念は次の2つ。地域における文化・自然環境を保全することで、結果的に子や孫の世代まで観光地を持続させられるという考え方と、観光客が現地の住民と協力し訪問先の文化や伝統の理解を深め保全していくという考え方だ。実際に、小笠原では環境保全に配慮したガイド付きツアーが組まれている。国連は2017年を「サステイナブルツーリズム年」と定めたこともあり、外国人観光客の誘致に注力している日本においても、観光産業のあり方を改めて考え直す時が来ているのかもしれない。

02「ICIJ」
- ■ 国際的な非営利ジャーナリスト団体
- ■ パナマ文書公開の立役者
政治・経済界人たちの資産隠しを「パナマ文書」が明らかにし、大きな衝撃が走ったことは記憶に新しい。パナマ文書は匿名者から提供された情報の入念な調査・分析を経て公表されたが、その調査を行ったのが、世界各国に住む100人超のジャーナリストが共同で調査報道を行う非営利ネットワーク『ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)』だ。
ジャーナリズムの本来の役割のひとつは、権力の監視者となり暴走を防ぐことだ。グローバル化に伴い、権力乱用・汚職も国をまたぎ発生するようになったため、国境を越えた監視者の必要性は強まっている。だが、新聞やテレビ局による単独調査および報道は年々困難さを深めていた。そこで、国際的な権力の暴走をあばき、説明責任を果たさせるためICIJは設立されたのだ。活動は寄付金によって成り立っており、利益追求に左右されない調査報道が可能だ。ICIJは、新しいジャーナリズムの理想的なモデルとなるのかもしれない。

03「空き家手帳」
- ■ 空き家フリーペーパー
- ■ 所有者と業者をマッチング
空き家の数が年々増加し、近年は社会問題にもなっている。リノベーションや民泊利用などの対応が少しずつ進むものの、まだまだ空き家を持て余す人が多いという。これを解決すべく、空き家活用ポータルサイトを運営する株式会社うるるが、空き家についての情報をまとめたフリーペーパー『空き家手帳』の配布を開始した。
空き家手帳では空き家のリスクを解説したり、活用事例を発表したり、様々な専門家からの意見を掲載したりしている。主な目的は空き家所有者とその解決サービスをマッチングさせることだ。現在、空き家所有者の6割は65歳以上のため、インターネットを使用しない高齢者にも情報が伝わるよう、フリーペーパーという形をとったという。これを見た人はうるるに相談することで、空き家活用の専門業者を紹介してもらえるそうだ。本当にニーズのある世代に届くような発信の工夫が、早期問題解決に一役買うのかもしれない。

04「AQUA」
- ■ 中国家電メーカー
- ■ デザインに注目
手のひらサイズの洗濯機「COTON(コトン)」が、国際的に権威あるiFデザインアワード2016を受賞し話題となっている。この洗濯機を製作したのが、冷蔵庫と洗濯機を販売している中国の家電メーカー『AQUA(アクア)』だ。
中国メーカーと言っても、その前身は日本の三洋電機。同社の洗濯機と冷蔵庫事業を中国のハイアールが買収し、その子会社という立ち位置だ。そのため三洋電機の開発拠点や従業員、技術などを受け継いでいる。従来の家電の常識を超えた製品開発を行うのが特徴で、冷蔵庫の扉に液晶ディスプレイを設置した冷蔵庫や、映画「スターウォーズ」の人気キャラクターを模した動く冷蔵庫などを発表。そうした奇抜な製品を発表することで各メディアに注目され、AQUAのブランドを周知してもらうことが目的だ。このようなメディア戦略とアイディアの面白さが、世界に評価される製品を生み出す秘訣なのだろう。

05「災害支援手帳」
- ■ 被災者支援の指南書
- ■ 支援の方法にも、良し悪しがある
先日熊本県で起きた大地震は、余震がさらなる被害を招いている。そこで避難生活を送る人を、少しでも支えたいという思いを後押しすべく『災害支援手帳』が閲覧無料となった。
これは被災者支援を、より効果的にする指南書のこと。本書は3つの章に分かれており、「お金で支援しよう」の章では支援金が被災地に届く流れを説明し、「モノで支援しよう」の章では、被災者のニーズに即した物資を送る重要性を説いている。また「ちょっとした工夫で支援は変わる」の章では、被災者が被災前の生活を取り戻すためにできる支援を紹介している。その中には、カップ麺はお湯が沸かない被災地では「支援ゴミ」になってしまうことや、義援金を狙うニセ募金があることなど、支援についてあまり知られていないことが多く書かれている。本書はそれらを丁寧に説明し、支援にも良し悪しがあると提言する。災害が多い日本で、防災だけでなく支援のあり方が重要視される日も近いだろう。

06「LINEモバイル」
- ■ スマホ料金が安くなるSIM
- ■ 「料金と機能のスリム化」
スマートフォンは未だ利用料が高いと言われる中、最近利用料金を大幅に値下げした「格安スマホ」が次々に登場し、人気を博している。そんな中、国内で利用者5500万人のSNSアプリLINEが『LINEモバイル』を開始し、格安スマホ市場に参入することが話題になっている。
LINEモバイルとは、スマホに差し込むだけで、利用料金が安くなるSIMカード(携帯電話のID)を提供するサービスだ。これにより月額料金が500円まで下がるだけでなく、LINEをはじめツイッターやフェイスブックなどのSNSの投稿と閲覧のデータ通信量が無制限になるという。これまでのSIMカードは、データ量が重いSNSでは動作が遅くなっていたが、LINEモバイルならサクサク動く状態でSNSを楽しめる。スマホはさらに高機能になる一方、利用者はLINEやSNSなど、自分が必要な機能しか使わない傾向にある。利用者から「料金と機能のスリム化」が求められる中、大手通信会社がどう動き出すか、今後に注目したい。

07「シン・ゴジラ」
- ■ 国産ゴジラ復活
- ■ 世界中が注目
海外で人気を得ている日本映画は数あれど、中でも有名なのが日本の特撮映画の代名詞「ゴジラ」だろう。そして近年、12年ぶりの国産ゴジラ映画『シン・ゴジラ』が話題になっている。
『シン・ゴジラ』は、日本で制作されるゴジラシリーズとしては29作目。日本を代表する監督である庵野秀明氏や樋口真嗣氏を各監督に迎え、日本の豪華俳優陣が出演する。今回のプロジェクトの背景にあるのが、近年のハリウッドでリメイクされた映画への批判だ。リメイクされた映画の中には、諸所の事情により原作を改変したシーンや原作者の意図しない展開がしばしば見受けられ、ファンからはオリジナル(日本)での映画製作を望む声が少なくない。今回のゴジラ映画も、2014年にハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の世界的な大ヒットを受け、国産ゴジラの復活が望まれたようだ。今夏公開予定の国産ゴジラ映画が、日本だけでなく世界の映画史にどれほど影響を与えるのか注目したい。
