01「ストレスクリニック」
- ■ 精神科の果たす役割が大きい現代
- ■ ストレスに悩む人に対応する
ストレス社会と呼ばれる現代において、精神的な負担に苦しむ人は多い。最近の研究では、これまで精神外科などの管轄だと思われていた身体の痛みも、ストレスに関連していることが判明しているという。それにより心療内科や精神科の需要が高まる中でも、“うつ治療”のイメージが強い「メンタルクリニック」という名称は敷居が高く、患者が自ら進んで来院しにくい場合があるようだ。そんな中、精神的な悩みを気軽に相談できる環境を整えるため、『ストレスクリニック』と改称する病院が増加している。
ストレスクリニックを設ける病院では、“うつ病予備軍”と呼ばれる人々に早期対処を施すことを目的とし、ストレス全般に対応できる体制を取り揃えている。自分ではなかなか判断しにくい、ストレスによる身体の不調やうつ病。現代社会の背景を元に、ストレスを抱えた人に対応するための医療機関が普及する日も近いかもしれない。

02「よくないね!ボタン」
- ■ 悲しい出来事に共感するボタン
- ■ 7つの感情を伝えるボタンを採用
SNS最大手のフェイスブックにて、『よくないね!ボタン』の提案が話題を呼んだ。これは、フェイスブックの特徴の一つである、共感ボタン「いいね!」と対になる存在として考案されたボタンのこと。
元々、良い投稿に対して“共感”の意を表現する「いいね!」ボタンは広く普及していたが、悲しい記事に対して怒りや批判の意を伝えるには不適切だという意見が多かった。そこで新たな試みとして「よくないね!」ボタンの設置の検討を発表したところ、世界中で反響があったという。最終的には「よくないね!」だけでなく、明るい感情~悲しみ・怒りを伝える7つのボタン「リアクションズ」が採用され、今後はより様々な感情の表現が可能になるという。現在はまだ一部の国と地域のみで試験的に実施されているが、世界中で使われるようになれば、「いいね!」だけで終わらない、多彩な感情表現でより深みのある交流ができそうだ。

03「森林環境税」
- ■ 最大の防災は森林保護にあり?
- ■ 地元住民からの反発も
大規模な降水のたびに話題になる土砂崩れ。その原因のひとつに、日本の森林が荒れていることが挙げられるという。整備された森林は雨水を受け止めるスポンジの役割を果たし、防災に繋がるというのだ。しかし、林業が衰退した現在、放置された地方の森林は荒れがちになっている。そこで、10年ほど前から各自治体が地域住民に森林を整備する費用の税負担を求める『森林環境税』が広がり始めた。
2003年に高知県が始めたのをきっかけに、現在では約30の県でこの森林環境税制度が施行されている。一見、防災だけではなく、環境保護の観点から見ても意義ある制度と言えそうだが、施行地域では課税への反発もあるという。大都市圏ではこの税制を導入している自治体がないだけに、縁遠いと感じる人もいるかもしれない。しかし、ゲリラ豪雨による氾濫被害が話題になるなど、都会人も無関心ではいられない。森林環境税はどこまで地域に受け入れられるのか。その広がりに注目だ。

04「しず割」
- ■ 「ふるさと割」の中の一つ
- ■ 静岡の旅をお得に楽しむ
お得に旅行ができる「ふるさと割」が注目されている。これは、一部の旅行プランにおいて、自治体が国の予算で旅費を負担する制度のことだ。中でも最近話題になっているのは、静岡県で行われている、指定のツアーでの宿泊プランがひとり1泊につき3000円引きになるキャンペーン『しず割り』だ。告知サイトでは「はんぺんといえば何色?」などの静岡県民に縁がないと答えられないクイズコーナーなどが設置され、県の色を活かしたアピールが好評のようだ。
このようなふるさと割は、静岡県だけでなく鳥取県や岐阜県なども始めており、通常の半額で楽しめるツアーなどが登場すると、販売後数分で完売してしまうほどの人気があるという。 各県へ旅行する入り口 として“旅費割引”を入れたことによる反響は大きい。今後、全国での取り組みの広がりが予想される。

05「MAMOR」
- ■ 自衛隊の魅力をやわらかく発信
- ■ 意外なところに眠る需要発掘が鍵
スポーツや映画、芸能など様々なジャンルごとに展開している雑誌において、ミリタリー服を身にまとって敬礼するアイドルが表紙を飾る『MAMOR(マモル)』が話題を呼んでいる。
これは、防衛省が編集協力をしている唯一の情報誌のこと。「国民とともに防衛を考える情報誌」をキャッチコピーに、防衛省の政策や自衛隊の活動を分かりやすく紹介している。表紙に有名なアイドルやタレントを使い、占いやイケメン自衛官紹介など若者向けのコーナーを設けているのが特徴だ。この、いままでにない政府の情報誌としては型破りな内容が大きな話題を呼び、近年の自衛隊への入隊希望者の増加にも一役買っているという。元々は出版社から防衛省への持ち込み企画だったのだが、自衛隊の広報からの「堅苦しくない、やわらかい表現で自衛隊をPRしたい」という需要と合い、創刊に至った。このような意外な需要による新しいモノの誕生は、雑誌に限らず、他の業界でも広がりそうだ。

06「チャリティーマラソン」
- ■ 参加型のチャリティー活動
- ■ 若い世代からも熱い支持
日本人はチャリティー活動に意欲的ではないと言われていたのも、過去の話になるかもしれない。ここ数年、チャリティーを目的としたマラソン大会『チャリティーマラソン』に人気が集まっているのだ。
ランナーやスタッフとしての参加費がそのまま寄付となるものや、一定額以上を寄付することで出走資格が得られるものなど、チャリティーへの参加方法は様々。ただ寄付するだけでなく、皆で協力してマラソン大会を盛り上げるという達成感が人気の理由のようだ。また、2000年代に成人または社会人となる若者は社会貢献に意欲的という調査結果もあり、そんな世代の価値観にフィットしたことも影響しているだろう。モノに恵まれた時代では、体験や感動などの“コト”に対する需要が高まっているとも言える。価値観の移り変わりによる行動の変化が、顕著に現れている事例ではないだろうか。

07「ツタヤ図書館」
- ■ 脱・閑古鳥の鳴く図書館
- ■ 結果は一長一短
地方の図書館といえば、利用者が少なく活気もない…なんてイメージを持つ人もいるかもしれない。ところが佐賀県武雄市図書館は『ツタヤ図書館』に改装したことで、初年度の来館者が92万人に上ったという。これはツタヤを運営する株式会社カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営を受託した図書館で、ツタヤの書店やレンタル店、カフェが併設されている。学びの場だけでなく、人々が集まるコミュニケーションの場としても人気を集め、経済効果は20億円とも言われている。
一方で、貴重な郷土資料や蔵書が廃棄され、図書館には適さないとされる中古の書籍を大量に仕入れるなど、グループ企業との癒着や選書の未熟さが指摘され、問題視されている。ツタヤ図書館は従来の図書館を大幅に上回る集客力を持つものの、まだまだ発展途上にあるようだ。
